嘘を溶かす ページ32
Aは僕にとっては、眩しすぎた。
僕のせいで何度も好奇の目で見られたり、酷い目に遭ったりしたのに、そんな事全く覚えていない様に、彼女は無邪気に振る舞うのだ。
『私達、ずっと友達でしょ?』
って、彼女がそういう度に、僕は否定も肯定も出来なくて、辛いだけだった。
けれど彼女は、そんな僕の意図等一寸も推し測る事無く、あの教会の裏手で『約束しよう』と云った。
『私達は、来年でも五年後でも十年後でも善い、一緒に此処を出るんだ』
其れは僕にとって、何としてでも手に入れたい未来像であり、絶対に実現してはならない呪いの言葉でもあった。
僕だって、彼女と一緒に未来へ進んで行きたかった。けれど僕と一緒に行くと、Aは一生僕と同じ好奇の視線に晒される。
「うん。約束」
そんな葛藤を無理矢理抑え付けて、小指を絡ませた其の後で、激しい後悔に襲われた。
何で僕は何時もこうなんだろう。こんな嘘誰の為にもならないのに。僕と一緒じゃAは何時まで経っても幸せには辿り着け無いのに。
だから其の約束をした日、僕は決めた。
彼女が僕を独りにしないのなら、僕が、彼女の事を嫌いになるしかない。
必死で自分に暗示を掛けた。Aの事等好きじゃない。寧ろ偽善に満ちた彼女なんて嫌いだ。嫌い、嫌い、嫌いなんだ。
Aは、頑張って素っ気なく振る舞う僕を心配する様に、時々歩み寄ったけれど、僕は気付かない振りと愛想笑いを繰り返した。
でも彼女も、相当のお節介だ。そんな僕を放って置く筈が無い。
『お握り作ったんだ。一緒に食べよう?』
あの日、彼女はそんな風に僕に声を掛けた。「今は、いらない」と目を逸らしたのに、Aは構わず僕の隣に腰を下ろす。
「今度は何の悩み?」
にこにこと笑う彼女にぎゅっと胸が締め付けられて、僕は笑顔を返せなかった。
・・・今だ。今、此の関係を断ち切って仕舞おう。
もう辛い思いはしたくない、お互いに。
彼女の笑顔なんて見たくないんだ。
「・・・世界の事も大人の事も子供の事も、皆嫌いだ」
Aは神妙な顔をして頷いた。
僕は躊躇いつつも、___思い切りAを睨み付ける。
怯んだ彼女に僕は云い放つ。辛さを飲み込んで。
『何時も偽善臭いAの事が、一番嫌いだ!』
凍った彼女の表情に、如何しようもなく苦しくなった。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時