強情な天使 ページ30
『若し、迷惑じゃなければ、お友達に成りませんか?』
青いステンドグラスを背にして立った彼女は、まるで天使の様だった。
「本当に善いの?僕なんかの友達で」
思わず其の天使に、僕はそう尋ねた。彼女の様な優しい少女なら、友達なんて僕じゃなくても幾らでも選べる筈なのに。
けれど彼女はパァッと顔を輝かせて、『も、勿論だよっ!宜しく!』と、僕に手を差し出した。
僕に其の手を振り払う理由がある筈も無く、彼女___Aの手を取った。
其の温かくて柔らかい感触をよく覚えて居る。
其れから僕達は、暫し平凡で幸福な日々を過ごした。
積み木で遊んだり、お人形遊びに付き合ったり、一緒に孤児院の狭い敷地を探検したり。
でも或る日、事件が起こった。
何時もの様に、院長先生に、地下牢に繋がれて居た時の事だ。
体を小さく丸めて寒さを紛らわして居ると、院長先生の物にしては軽い、パタパタとした足音がした。
一体誰の足音だろうと怪訝に思って居ると、途端に、視界に見慣れた少女が現れた。
「A・・・?何遣ってるの、こんなところで」
若しかして彼女も懲罰だろうか。そう思ったけれど、Aは照れ臭そうに笑った。
『一寸心配で・・・忍び込んじゃった』
「え!其れ、職員さんにバレたら大変だよ、早く帰りなよ!」
彼女は度々無謀な事をする。小柄だから巧く忍び込めたんだろうが、彼女が見付かって折檻されたりはしないかと心配で気が気じゃなかった。
『でも独りぼっちは寂しいでしょ?私は君を独りにしないって決めたの。だから私は帰らない!』
こういう風に言い張り始めた彼女は強情だ。僕は仕方なく諦める振りをして、本当はそんな風に云う彼女がとても愛しくて大好きだった。
『えっとね、お腹空いてるかなって思って、パン持って来たの。今日の朝御飯に出た奴』
僕は其の硬いパンを受け取ろうとして、カツン、と小さな音を聞いた。
「拙い」
僕の呟きに、彼女は首を傾げた。
「院長先生の足音だ、早く何処かに隠れて」
今思えば、其処には善い隠れ場所なんてなかったのに、僕はそう囁いた。
『私は大丈夫だよ』
強情に言い張った彼女に、今度は喜びでは無く、異様な程の苛立ちと寂しさを感じた。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時