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逢瀬 ページ23

君を初めて見たのは、青いステンドグラスの教会だった。




君は俗に云う“劣等生”だった。世間から隔離された孤児院の中で隔離され、差別された存在だった。




「何の価値も無い、愚図で役立たずの穀潰しめ」




院長先生によくそうやって叱られ、否、罵られて居た。




幼い少女だった私は、同時に莫迦な娘だった。味方も居らず、拠り所も無い少年の居場所に成りたいと、阿呆な事を夢想して、私は教会の真ん中に一人取り残された敦の下へ走った。




『ね、ねえ、君!』




ぱたぱたと煩い私の足音に反応したのか、私が発した呼び掛けに反応したのか或いは両方か、うなだれて居た君は私の方を振り向いた。




『あ、あのね!私は日暮Aって云う名前なんだけど、えっと、君が、心配で・・・』




続けようとして、敦の頬に付いた傷痕を見て一瞬身がすくんだ。其処で止めておけば善かったものを、私は君の手を取った。




『だから、その・・・若し、迷惑じゃなければ、お友達に成りませんか?』




其の時敦の顔一杯に広がった喜びの色は今も忘れられ無い。




「・・・本当に善いの?僕なんかの友達で」




『も、勿論だよっ!』




思わず興奮で頬が紅潮する。『宜しく』と差し出した手を、君は心底嬉しそうに握った。




嗚呼、そういえば君の手は、其の時からずっと、氷の様に冷たかった。




結局私の手で敦の孤独を暖める事は、今と成っては叶わぬ夢なのだけれど、莫迦正直な夢想家は、そんな事一寸も考えず、ただただ幸せな未来しか見えて居なかった。




____今では、最早戻れない其の想い出が、少し懐かしい。

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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/  
作成日時:2019年10月3日 14時

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