恩人 ページ19
Aside
薬品の匂いがツンと鼻を突いた。
其の匂いに違和感を感じて目を開けると、其処は知らない医務室の様だった。
「目ェ覚めたかい?」
蝶の髪飾りを付けた、ショートボブのハイカラな女性が、私の顔を覗き込んだ。
『へ!?・・・えーと・・・』
完璧におかしい。私は確か・・・そう、太宰さんと心中した筈だ。なのに医務室に居るって事は、
『そういうことか・・・』
大方、途中で人に見付かって救急車を呼ばれたんだろう。此れじゃあ飛び込み損だ。
「なんだい・・・不満そうな顔だね」
ハイカラな(多分)女医さんが、私を悪戯っぽく見る。
いけない。女医さんに失礼だ。折角善意で助けて呉れたのだから。私は笑顔を見せる。
『いえ、そんな事ありません。命を救って呉れた女医さんには感謝しか_____』
「嘘だね。アンタの目は自 殺志願者の目だ。太宰と同じだよ」
私の科白を遮って女医さんが笑う。私は、彼女の最後の科白が少し気になった。
『・・・女医さん、太宰さんとお知り合いなんですか?』
「あぁ、奴は同僚だよ。何時も川に入水しに行く厄介な奴でね」
私は女医さんの言葉に驚いた。てっきり、此処は病院だと思って居たからだ。けれど、太宰さんの職場だということは、武装探偵社の医務室に寝かせて貰って居るのだろう。
「そうだ。アンタの事泳いで助けた奴が居るんだ、連れて来るよ」
女医さんの言葉に再び目を見開く事と成った。私の事を泳いで助ける、そんな聖人君子が居たのか?
女医さんは部屋を出ていった。如何やら私の“命の恩人”を連れて来て呉れるらしい。
『命の恩人、か・・・』
皮肉な物だ。そんな立派な人が、生きたい人では無く、よりにもよって私の様な死にたがりを助けて仕舞うなんて。
暫く時間が開いてから、ガチャン、と音がして医務室のドアが開いた。
途端、純白が目に入った。
優しく柔らかいのに、冷たく無慈悲な白い色。
『・・・何で、君がっ・・・!』
_____中島敦が、私の幼馴染みが、其処に居た。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時