波紋 ページ15
芥川様は、行き場の無い感情を抑え込む様に目を閉ざした。
「___彼の人は簡単には死なぬぞ」
芥川様はポソリと呟いた。
『・・・存じております』
芥川様が視線だけで此方を見た。
『でも、其れでも、一緒に死ぬんです』
「愚かな娘め」と、芥川様は鼻で笑った。
「だが少し___其の愚かさが羨ましい」
聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量で呟いた後、芥川様は此方を睨んだ。
「万に一つにも無いと思うが、此れで貴様のみが生き残ったりすれば、承知せぬぞ」
『真逆』
私はなるべく自然に微笑したが、彼は顔をしかめた。如何やらまた上手く笑えなかった様だ。
『・・・では私は此れにて。夜風で風邪を引かぬ様お気を付け下さい』
態と何時もより回りくどい云い回しを使ったのは、彼への軽い皮肉だ。
「僕は風邪等引かぬ。貴様こそ、太宰さんと逢う前に風邪を引いたとあらば僕が殺しに行って遣る」
心配して呉れて居るのだと無理矢理に納得して、『有難う御座います』と云った。
私の噛み合わぬ返事に芥川様は眉を潜めて、「奇妙な奴だ・・・まぁ善い」と独り言を呟いた。
そして何も云わずに、私が向かう方向とは逆に歩いて行った。
月を隠して居た薄雲は何時の間にか何処かへ行って仕舞って居る。
冷たい風が吹いた。
『・・・此れは本当に、風邪を引かない様にしないと』
少し薄すぎた外套を羽織り直し、歩いた。
夜は深まり、河が三日月を映して居る。
落ちて居た石を投げ込めば、其の月が儚げにゆらゆらと揺れた。
石が立てた、少し重い水音が、後味悪く耳に残った。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時