刹那の本音 ページ12
それから私達は黙って、私が住むアパートの前に着いた。
『では、家は此処ですので』
軽く頭を下げると、あなたは当たり障りは無いけれど、素顔で無いともはっきり判る笑みを見せた。
「そう。其れじゃあ来週」
素っ気ない返事をして背を向けた太宰さんを、何故だか急に引き留めたく成って、私はあなたの背に叫んで仕舞った。
『あの!』
あなたは不思議そうに振り返った。対する私は、まるで続く言葉等考えていなかったから、一寸慌てふためいて、そして続きを絞り出した。
『あの、太宰さんにああいう事云って仕舞ったんですけど・・・私は来週の事、凄い楽しみ、なので。唯、あなたが、私みたいな餓鬼との約束を楽しみだなんて、信じられ無かったってだけですので』
引き留める為の言葉を云おうとしたのに、酷く言い訳がましい科白に成って仕舞った。太宰さんも呆れたのか、呆気に取られた様な表情をして居る。
『えーと、其れだけ、云いたかったので・・・』気まずく成って口の中でモゴモゴと云うと、太宰さんは私の傍まで歩いて来た。
そして、
_______直ぐ近くであなたの匂いがした。
私の傍には、先刻まであなたが差して居た傘が転がって居た。
如何やら、あなたが私を抱き締めて居る様だ。
『・・・え?』
照れ云々以前に訳が判らない私がそう漏らすと、あなたの掠れた声が耳元で聞こえた。
「Aちゃんこそ・・・期待させないで呉れっ・・・」
_____其れって若しかして、そういう意味の言葉なのだろうか。
私の頭に一瞬そんな愚かな考えが浮かんで、直ぐシャボン玉の様に消えた。
「本当だよ、Aちゃん。本当に楽しみだ、きみとの心中」
其の掠れた囁き声は、今迄聞いたどんな言葉より、重くて温かい言葉だと思えた。
24人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時