傘 ページ11
中原様が乗った車は動き出して、路上には私と太宰さんが並ぶ形と成った。
「Aちゃんは、生きたい?」
あなたが、長い指を一本立てて、私に訊ねた。
先程の中原様の科白に、私が心変わりしないかと心配して居るのだろうか。
『生きたければ、こんな本読みませんよ』
苦笑して、鞄に入った完全自 殺読本を見せると、あなたは「それもそうだね」と笑った。
傘のお陰で、横に並んで歩く私達の間には微妙な距離感が生じる。
君との一件があってから、私は誰かの隣に居るのが嫌いに成った。
何時拒絶されるのだろうか。何時憎まれるのだろうか。何時見捨てられるのだろうか。
何時、大切な相手が目の前から消えて仕舞うのだろうか。
そう考えながら生きるのは到底楽なものでは無い。それならば早々に人生を断ち切って仕舞おうと思った矢先に、あなたが現れた。
あなたは、誰の事も追わない代わりに拒まない。丁度、此の傘一個分位の距離を保って隣に居て呉れる。
そんなあなたと、人生の幕を引けるのなら、かつての馬鹿正直も報われるというものだ。
「Aちゃん、早く来週になって欲しいね。早く心中したいなぁ」
あなたは嬉しそうに笑う。まるで私の隣が嬉しいとでも云う様に。
______違う、そんな訳は無い。思い上がるな。
『・・・止めて下さいよ』
思わず口を突いて出た其の言葉に、あなたは驚いた様に目を見開いた。
「如何したの、急に?」
『あの・・・あまり揶揄わないで下さい。本気にして仕舞います』
冗談みたいに云った太宰さんの言葉を遮って、私は云った。
太宰さんは動揺した様な顔をして、それから微笑した。
「本気にしても善いのだよ?Aちゃん」
私は立ち止まってあなたの目を見た。あなたの瞳の中には、傘を差した私が居る。
『・・・本当に、止めて下さい』
私の言葉に、あなたは一瞬表に現れた苦味を押し殺して笑った。
胸が締め付けられる様な思いを、一瞬感じた。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時