1話 ページ2
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小さい頃は、そりゃ、俺だって。
主人公みたいな、爽やかなかっこいい人になりたいと思っていた。
例えば...そうだな、不良に絡まれた女の人とかを、助けられる人になりたいなぁ、とかかな。
かっこいい戦隊ヒーローとか、世界を救うライダーとか...すごいなって憧れて、夢を持って。
『 大人になったら、ヒーローになる!! 』
そんな風に騒いで、ポーズ決めて、それだけでなぜか変な自信を持って。
今思えば、“馬鹿”みたいなこと。
俺は知った。大人の汚さを。
俺の両親は普通じゃなかった。『世間』的に見れば。
二人共、汚かった。
あの人達にとっては、普通だったのだろう。
互いにわかっていた。
その時、俺は思ったんだ。
『主人公』になんて、なれない。
この世界に、『主人公』なんていない。
みんな、汚い。
俺は、笑わなくなった。目立たなくなった。泣かなくなったし、甘えなくなった。
知った時に失ったものが多過ぎた。
『勇者じゃなくて、村人になろう』
『主人公じゃなくて、モブになろう』
そうしたらもう、
何も失わないだろう?
俺はその日、夢を捨てた。
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作者名:氏病 | 作成日時:2015年12月13日 20時