たった一つの居場所【治崎廻】 (ページ9)

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八番ページ9

「おい、そこの女待て」

突然そんな声が教室に響き渡る
声の主は治崎さんだった

「何で治崎さんが…」

「掃除くらい自分でやれ、押し付けるな」

「わ、私は用事があって…！」

「嘘言うな。A行くぞ」

相手に有無を言わせない勢いで言いたい事を言い、
未だに驚いている私の服を引っ張って教室を後にする

私は彼にどう声を掛ければ良いのか悩みながら無言の治崎さんに付いて行く

「悪い…」

「え…あ、いえいえ！助かりました」

「…オヤジが会いたがってた。今日も来ないのか…？」

突然謝れたかと思ったら次は悲しみを含んだ様な声音でそう問いかけられる

何だか彼らしくない

何時もの様な何処か怖い印象を抱かせる彼は何処へ行ったのか

「治崎さんが来て欲しいと言うのなら、行きますよ？今日」

「俺は来て欲しい…」

冗談で言ったつもりが本当に言ったので驚き、思わず歩みを止めてしまう

そんな私を彼は振り返り不思議そうに見つめる

「いや、何でもありません」

「針が待ってる。早く行くぞ」

意味が分からないと言う風に眉を潜めたが針の元へと足を早めたのだった