たった一つの居場所【治崎廻】 (ページ27)

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二十六番(治崎side) ページ27

“恋愛感情を彼奴に抱いてるだろ”

廊下を歩いていると部屋から突然そんな針の声が聞こえた

何時もの敬語ではなく、素の話し方

「違うか？A」

俺は気になりながらもそのまま通り過ぎようとしたがその言葉で足が止まる

Aが居ると言う事はさっきの言葉からして彼女には好きな奴が居るという事になる

(別に俺には関係のない事だ)

そう思っていても何故か気になってしまう

「…私はあの人にずっと憧れてた。今だってそうです。格好良くて、強くて…私もあんな風になれたらなぁって。

でも…私があの人に対するこの想いは針からしたら憧れじゃなくて恋愛感情だって感じたんでしょ？他人から見てそう感じたのなら、そうなんだと思う。

そっかこれが恋か…私、廻の事が好きなんだ…」

後半からは少しずつ声が小さくなっていき、最後の言葉は聞き取れなかった

しかし、俺は立ち聞きし話を勝手に聞いてしまったという少しの罪悪感と彼女が好意を寄せる人物が居るという事に対してのこのモヤモヤとした気持ち

これ以上話を勝手に聞くのは悪いと思い、元来た道を戻る

(俺はてっきり針の事が好きなのかと思っていたが…違うのか)

二人の話し方からして好きな奴は針じゃない

その事実に心の何処かでホッとする俺が居た事に俺自身、気が付かなかった