episode4 ページ6
時計の針が7時を回っていた。
部活が終わり、制服に着替えたリアンは、美術室にまだ明かりが付いてることに気が付いた。
美術教師である藤崎の可能性の方が高いが、もしかしたら、と美術室の扉を開ける。
「居た…」
リアンはポツリと呟いた。
アルは椅子に座り、キャンバスに向かって鉛筆を走らせていた。扉を開ける音にも気が付かないほど集中している。
その真剣な横顔にリアンは胸を高鳴らせた。
…やっぱり、綺麗な顔してんなあ…。
リアンはアル以上に好きだと、かっこいいと思う顔に出会ったことはなかった。テレビの中のアイドルよりも、俳優よりも、かっこいいと思っている。
だから女子が「本当にスミス君って、下手なアイドルより断然かっこいいよね！」と言ってるいるのを聞いた時、「そんなの、俺の方がずっと前から知ってる」と嫉妬した。
鉛筆の音が美術室に響く。
前髪が邪魔になったらしく、アルは鉛筆を置き、前髪をかきあげる。
初夏とはいえ閉め切った部屋は暑く、顔や首筋に汗が伝っている。
はあ、と吐息を吐く様子は何というか…
(色気ありすぎだろ16歳…！)
リアンはアルの何とも言えない色気に思わず顔を覆う。
「リアンさん？」
アルはリアンに気付いた。
「あ、わ、悪い、明かりが付いてたから、居るのかなって」
「…ああ、もうこんな時間か」
アルはキャンバスを片付けようとする。
「なあ、何描いてたんだ？ 見てもいいか？」
「大したものは…良いですよ」
アルはキャンバスをリアンに向けた。
そこに描かれた人物を見て、リアンは目を大きく開いた。
「俺…？」
「あんた以外誰がいるんですか」
「う、いやでも、これ、」
そこには部活中であろうリアンが描かれていた。
丁度ここからリアンの部活している様子が見えるのは知っていた。グラウンドからも美術室がよく見えるからだ。
こっそりと、絵を真剣に描くアルを見つめていた。
キャンバスに描かれた絵は躍動があり、それでいて繊細なタッチで描かれている。
精巧に出来ていて、写実的なその絵はかなり上手い。
実際、藤崎にはよくコンクールに出したら？と言われている。
だが、それよりも。
丁寧に柔らかく描かれたその絵は、描き手の愛情、恋慕が込められていた。
好きで好きで堪らないと言っているように、リアンは感じた。
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作者名：あかり | 作者ホームページ：
作成日時：2019年7月4日 5時
