君が私を覚えていないのなら【太宰治】

連れて行きたいところ ページ13

太宰side



Aにその事＿＿＿＿付き合っていたなんて言っては気まずくなるのはわかっていたので、｢1番仲が良かった｣と言った＿＿＿＿を話すと、彼女は思いのほかあっさりと受け入れた。



もっと、混乱したり、そんな訳ないと取り乱したりするかと心配していたのだけど、杞憂だったようだ。



もしかしたら、彼女なりに気を使ってくれたのかな。



私のAに対する態度から、私が今とてつもなく悲しんでいることが感じられたのかもしれない。



だったら申し訳ないなぁ。



私は君の事が好きで、どうしようもなく好きでやっていることなのに。



Aは翌日からいつも通り出勤してきた。



真面目に働くのもいつも通りだ。



私が昼飯に誘うと｢国木田さんも一緒なら｣と答えてくれた。



私は2人が良かったのだけど……と国木田君に視線を送ると｢俺にどうしろと言うのだ｣と返された。
言われた訳じゃないけどね。



｢ねぇA。今度の休みに何処かに出掛けないかい？｣



｢2人でですか？｣



｢うん｣



国木田君が｢おい｣と言いかけたが手で制す。



｢良いですよ｣



｢本当かい！？｣



｢言ってきたのは太宰さんです｣



｢まぁね。連れて行きたいところがあるのだよ。当日まで秘密でもいいかい？｣



｢どうぞ｣



やったね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



｢おい太宰。Aを何処に連れて行く積もりだ？｣



｢私がAと行ったところ。まずは初めてデートした場所かな｣



｢思い出の場所を巡って記憶を手繰り寄せるという訳か｣



｢そゆこと。そんな簡単にいくとは思えないけどね｣



どんな小さなことでも、私は君の為なら何でもやるさ。



このままじゃ、絶対に幸せになんてなれやしないのだから。

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