君がいない、君がいない、君がいない。【文豪ストレイドッグス】【短編集】

届く筈もない手紙を延々と【夢野久作】 ページ5

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僕と同い年のAちゃんは異能が暴走する度に座敷牢に来た。「またやっちゃった」と無邪気に笑う彼女を見ていると楽しい。色々なお話をしてたくさん遊んだ。

そんな日が長く続くわけもなく、Aちゃんが座敷牢から出る日がきた。一緒にいられないなんて厭だ。と云う僕に森さんは閃いたように顔を輝かせた。

「じゃあA君に手紙を出すことを許可しよう。A君が君に手紙を送ることもね」

手紙を書くなんて初めてだ。貰った鉛筆を握り、なにを書こうかと思考を巡らせる。自然と文は綴られ、少し不格好な文字が便箋を埋めた。読めないこともない。大丈夫だろう。

新しく設置されたポストに手紙を入れる。此処に入れると黒服さんが回収して届けてくれる。次の日に返事は届き、多少驚き乍らも封を切った。

可愛らしい便箋に綺麗な文字。一日の出来事などが細かく綴られていた。未だに僕との別れを惜しんでいるようで「また会いたい」なども書かれていた。直ぐに返事を書き、ポストに入れる。

文通は長く続き、半年経った。然しいきなりAちゃんから手紙が届かなくなった。嫌われたのか？ と不安になり、手紙を送る。然し返事は来なかった。

数日後、森さんが座敷牢に来た。「一寸着いてきなさい」と云う森さんに着いていくと「霊安室」と書かれたプレートが提げられている部屋に着いた。

扉を開けると真ん中にポツンと置かれた寝台が目に入った。それ以外にはなにもない。誰かが寝ている。然し此処からは見えない。近づいて顔を覗いた。



「……え？」



Aちゃんが、元気で明るくて優しい彼の子がいた。



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信じたくなくて、認めたくなくて。手紙を書いてポストに入れた。届く筈もない手紙を延々と。

今日も僕は返事が来ることを期待する。永遠に来ない返事を。

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