君がいない、君がいない、君がいない。【文豪ストレイドッグス】【短編集】

すれ違い【立原道造】 ページ22

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彼奴の面影を探して夜の横浜を駆けた。いないことくらい判っていた。然し、どうしても存在を求めてしまう。

「クソッ……。A！」

Aはもう死んだ。いない、いないんだ。それでも未だ何処かにいる気がして探してしまう。

街の喧騒はやけに頭の中で響き、不快感を煽る。此奴らは生きているのにAは死んでいる。死ぬべき存在はAではなく別の奴だろう。

「……なんでいねぇんだよ」

ぽつりと呟き、誰もいない裏路地に入った。ずるずると壁にもたれ乍ら座り込み、空を眺める。

意味もなく伸ばした手は虚空をさまよい、ぱたりと地面に落ちた。Aは掴んでくれただろうか。否＿＿

「もう、死んじまったもんな」

置いていかれた。独り残されてしまった。たとえ其の死が俺の為だったとしても俺が悲しむなら意味がないだろう。

「A……」

返事はなく、静寂が訪れる。失笑し乍ら立ち上がり、裏路地から出ようと一歩足を踏み出した。

「立原君」

何よりも求めていた、澄んだ声が響いた。慌てて振り返るも其処には何もない。

裏路地の為、暗く、影がある所為で奥まで見えなかった。Aはいるのかと辺りを見回す。


探してもAは見つからず、引き上げるしかなかったが諦めはつかなかった。

今日も夜の横浜を駆ける。Aを求めて探し続ける。


あの声は、幻聴だったのかもしれない。


然し、俺はAがいることを信じている。

俺は、今日も彼奴を探す。









「＿＿＿＿もう、止めてよ」



立原君、私を探さないで。



貴方の人生は自分の為に歩んで。私の所為で無駄にしないで。



そうじゃないと、死んだことを後悔するじゃない。




涙を流したが立原君は気づいてくれなかった。




想いはすれ違う。



彼は、今日も私を探す。

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