君がいない、君がいない、君がいない。【文豪ストレイドッグス】【短編集】

思い出隠れんぼ【太宰治】 ページ13

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「問題です。私は何処にいるでしょう？」

そんなメールが送られてきたのは数週間前だった。

Aが、任務から帰ってこない。探偵社は大騒ぎ、Aの捜索に進展はなかった。

頼りになるのはこのメール。場所を探知し、其処を探してもAはいなかった。

着心音が響く。誰からだろうと確認するとAからだった。

「思い出の場所、其処で待ってる」

思い出の場所なんてたくさんある。駆け、横浜市内を探し回った。

着心音がまた響く。

「公園」

書かれた其の単語。すぐに何処の公園か判った。よく一緒に出掛けた公園だろう。

然し其処にAはいなかった。着心音が響く。

「遊園地」

私とAの初デートのときに行った遊園地へ向かった。此処だろう。と確信するもAはいない。

永遠のような隠れんぼ。Aはなにをしたいのか。メールは恐らく時間指定で送っているのだろう。

その後も思い出の場所を巡り、とうとう二十件目のメールが届いた。

「お屋敷にいるよ」

諦めていた。いるとは思わなかった。それでも走り、思い出の場所である屋敷に向かった。

此処は、織田作が死んだところ。そしてAが私に好きだと云った場所。

息切れし、疲労したが扉をゆっくり開けた。

「……ずっと、待ってくれていたのかい？」

返事はない。ぴくりとも動かないAを見つめる。

「ごめんよ、許してくれないかな？」

所々黒くなった赤い液体が視界に入った。それを気にせずAの体を抱き上げる。

「ごめんってば。だから返事をしておくれよ」




任務で失敗しても咎めないから。




誰も君に死んでほしいなんて云っていないから。




視界が滲むのは何故だろうか。




こんなにも苦しいのは何故だろうか。




着心音が響いた。





「見つけられちゃった」





長かった隠れんぼは、終わりを告げた。

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