七回目 ページ9
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「随分疲れてるようだけど"何かあった?"」
「......」
目隠しを上にずらし見えた宝石は
全てを見抜くような鋭い輝きを放っていた。
私はこの頃悟が苦手だった。勿論そんな事言える
立場ではないのだけれど。
皆がそれぞれ互いに信頼を置いていた、
傑がいた高専時代とは打って変わって
常に疑い、監視するような目付きと笑っているのに
一枚の分厚い壁が阻んでいるような距離感。
悟は間違いなく気づいている
私が傑と会っていることに。
けれど直接触れてこない、上に報告するわけでもない。
彼もまた何を考えているか分からなかった。
私は取り繕った適当な笑みを浮かべて
悟に言った。
「ううん、ちょっと寝不足なだけ。
心配してくれてありがとう。」
「そっか。無理は禁物だよ。
じゃあ僕は可愛い生徒たちが待ってるから。」
「うん、行ってらっしゃい。」
悟はヒラヒラと手を振ると一度も振り返ることなく
去っていった。息を吐くと緊張が一気に緩んで再び
椅子に腰掛ける。
既に限界が近かった。
皆に隠し事をしていること、何を思っているのかわからない傑と、脆い関係を続けること。
自分がどうしたいかも分からなかった。
「ごめん。」
呟いた言葉は自分にしか聞こえていなかった。
「....."寝不足"ねぇ。ホント何してんだか。」
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あめ玉 - ぅ、泣ける!いい話!終わりかたがすごく好き!完結おめでとうございます! (2022年3月28日 16時) (レス) @page22 id: 09aca0ac89 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - げとーさんの最期の言葉に涙腺崩壊(涙)コメントせずにはいられませんでした。 (2022年3月27日 23時) (レス) @page20 id: bb3f1353bd (このIDを非表示/違反報告)
チョコミン党(プロフ) - うわぁぁぁぁーーー!!夏油さんずるい!!かっこよすぎる!! (2022年3月27日 22時) (レス) @page20 id: e690e3eff9 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - とても面白いです。 自分のペースで更新を頑張ってください。 私も呪術廻戦にハマってしまい作品を書いてますが良かったら題名を教えますか? 作者さん、体に気を付けてくださいね! (2022年3月20日 12時) (レス) id: 8e5a2f605a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴神 | 作成日時:2022年2月27日 18時