9 ページ9
靴を履き替えるために昇降口へ行くと、テニス部の連中が下駄箱の前で戯れ合っていた
見知った顔が何個かあったので、部活は？と尋ねたところ、顧問の先生が高熱で帰ったとかで急遽休みになったらしい
「バスケ部も休み？」
「いや、家に忘れ物したから取りに帰るとこ」
「なんだよ〜、高野も恋煩い？(笑)」
言われた意味がわからず、なにそれ？と聞き返す
「神田も昨日忘れ物しててさあ、まじびびったわ。あいつ最近試合中ミスも多いし、なあんか抜けててさ、恋煩いじゃね？って噂」
「あー、こいつの妄想だから気にしなくていいぞ」
「ちげえよ！あれは絶対恋に悩む乙女の目だ！」
「乙女って、神田は男だろ」
なんだか居た堪れない気持ちになり、さっさと帰ろうと無意識に視線を駐輪場に移したときだった
「っ……わるい、帰るわ」
「え！ちょっ……」
下駄箱に入れっぱなしになっていた自転車の鍵を引っ掴んで、目の端に捉えた人物の元に走った
前の彼女が一緒に帰りたいと言ったとき、引いて歩くのも面倒だっから置きっぱなしにしていた
今じゃ殆ど使わなくなった自転車はチェーンもカゴも錆びついており、サドルからは蜘蛛の巣が張っている
特に注意を受けるわけでもないので、この学校の駐輪場では放置された自転車は特に珍しいものでもない
「っ、うぇ！？た、高野くん……」
引き止めるために強引に掴んだ腕は、俺より幾分か細いものだったが、それでもやはりしっかりした男のものだった
酷く混乱しているのか、神田は抵抗することも忘れ金魚のように真っ赤な顔で口をパクパクしている
こいつがこんな風に取り乱すのは俺だけだという事実だけで、さっきまで抱えていた苛立ちは優越感でかき消されていく
「なあ、なんで逃げんの？」
恐がらせないよう、なるべく優しい口調で問いかける
「……逃げてない」
「……あんなあからさまにやられたら流石に傷つくから」
「高野くんも傷ついたりするんだ」
コイツ……
「なに怒ってんだよ」
「怒ってない」
「嘘つけよ」
「離して、部活行くから」
「今日テニス部はオフって聞いたけど」
「……」
あ、黙った
もう逃げられないと悟ったのか、俺より10センチほど低い位置にある瞳がゆらりと揺れたかと思えば、彼は震えた声で言った
「なんだよ……もう高野くんわけわかんない」
そう言った神田は、袖でゴシゴシと目元を拭った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 976人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山桜桃(プロフ) - 完結おめです！読み終わりましたーこれから他のBL作品巡回してきます┌(┌＾o＾)┐ﾎﾓｫ、、、() (2020年4月28日 6時) (
レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
山桜桃(プロフ) - ご、、ごめんなさい！下の人がコメントしたので通知が来て「暇だから読んでみっか」と思って読み始めたら、、エグいです、、、可愛すぎて無理、、、「萌えます」の一言で終わらしちゃダメなやつ！！！！あっ私、下のカラ松ガールです。本当に読む手が止まりません！ (2020年4月28日 5時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 萌えますねぇ。ちょっと逝って来ます、どこに？それ聞きます？？ (2020年4月28日 2時) (レス) id: cfb86d3e94 (このIDを非表示/違反報告)
なんじゃらほいほい(プロフ) - カラ松ガールさん» まじですか……嬉しい (2019年12月1日 4時) (レス) id: 8999d0f4f9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 萌えます (2019年11月28日 0時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なんじゃらほいほい | 作成日時：2018年4月5日 11時
