今は逃げるしかない僕を許して欲しい。 ページ6
「祐樹の野郎!」
祐樹とあった事を話すと声を荒げて拳を握りしめた陽介。
『祐樹にはあの日の事話してないの。まだ中学生だって甘く見てたのかな…』
中2の出来事を祐樹には話せなかった。
「でもAが怖い思いしたってあいつも知っとった方えーやろ!?」
『あの子はサッカーしか無いから。サッカーで有名になるのが、あの子の夢だから…』
「分かるけどそれとこれとは…」
『陽介、あたしあの家出るわ。事務所が用意したマンションに引っ越す。』
「それでいいん?」
いいかどうかなんて正直分からなかったけど、祐樹の本当の気持ちを知って怖かったんだ。
『あたしが今大切なのは篤人や陽介達、仲間だから。後悔はしない。』
「ウッチーに有りのまま話すんやろ?」
『もちろん。篤人には隠し事したくないから。』
陽介は私を静かに抱き寄せる。
「ウッチーなら分かってくれる。だから大丈夫や。」
『ありがと。』
祐樹との一件で実家に居づらくなった私はその夜両親に全てを話した。
「逃げる様に居なくなるなんて…」
『でもママ?さゆきは祐樹の事を…』
「遠くに行くわけじゃないんだろ?いつでも帰ってくればいいし、篤人がついてるんだから心配要らないだろ。」
「だけど、篤人君だって今大切な時期なんだし…」
『篤人と一緒に住むなんて言ってないよ?ただ、あたしはもう…』
「お姉はズルい!」
外から帰って来た妹のさゆきがいきなり叫ぶ。
「さゆき!」
「お姉はいつだってそう。あたしから好きなモノを奪って平気で傷付ける。祐樹だってお姉が篤人君と付き合ってるの知ってたらお姉の事諦めたのかも知れないのに!!お姉なんか大っ嫌い!!!」
『さゆき…』
さゆきに言われて妙に納得する自分が狡いのは分かっていた。
祐樹に篤人と付き合っている事を言っておけばトラウマが蘇る事も無かったしさゆきを知らず知らず傷付けていた事を後悔する事も無かったはずだ。
祐樹に本当の事を言ってしまえばあの子の大切な夢を途中で奪ってしまうのではないかとも思う程、祐樹にとって私の声援が支えだった事も分かっていた。
だから祐樹が高校生になるまで篤人と付き合っている事は言わないでおこうと思った私が甘かったのかも知れない。
私は次の日最小限の荷物だけを持って実家を出た。
さゆきからは逃げたと思われても仕方なかった。
全ては祐樹がサッカー選手になる夢を諦めない為と、さゆきと祐樹に佐々木事件を知られない為だから…。
僕が逃げた場所に優しさが溢れる君の姿があって→←Reviving memory
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作成日時:2013年4月27日 21時