大切な友の前では僕も普通の高校生になれる ページ13
始業式もろくに出席出来なかった久しぶりの学校へと足取り軽やかに進むと私服姿の私に対する視線が痛い。
今日は制服じゃないけど明日から制服を着て学校に来れる喜び。
もちろん向かう先は篤人の居るグラウンド。
近付くにつれて大きくなるサッカー部の声。
ケータイを取り出し美羽に電話する。
美羽はどんな時でもすぐ電話に出てくれる。
「A！どうした？」
『美羽ー！会いたい』
「あたしだって！今どこ？」
『今、グラウンドの近く。』
「マジ！？今から行く！」
制服姿の美羽が全速力で駆け寄って来る姿が羨ましくて、少しだけ切なくなった。
「Aー！」
私の名前を呼ぶと抱きついてくる美羽。
『美羽ー会いたかったー』
「あたしもー」
美羽が抱きつく相手はもちろん私だけ。
「あれ！A先輩じゃない？」
「やばーい！超ーやばーい！マジでキレイ！」
後輩が私の存在に気付き始め騒ぎ出してそんな後輩の声に美羽とあたしは笑い合う。
『今日麻由の誕生日だからみんなでご飯行こうって麻也が』
「麻也のくせに？(笑)」
『そそ(笑)』
「何も言ってなかったな」
『いつもの事じゃん(笑)』
「確かに(笑)グラウンド行こう！みんなビビんじゃね？Aが来たら」
『ミチとトンジ煩そー』
「確かに。あ、祐樹頑張ってるよ？」
美羽と麻由は強制的に決められたサッカー部のマネージャーをまだしている。
『そっ。』
「あれから祐樹に会った？」
『会ってない。だから今日久々に見る。』
祐樹とはあの日以来顔を合わせていない。
多分、怖かったんだ…祐樹に会うとトラウマが邪魔してきそうで。
「さゆきの事言ったの？祐樹に。」
『言わないよ。さゆきはそーゆーの好きじゃないから。お姉はいつもさゆきの好きなモノばっかり持ってくってこ言われちゃったしさ。そんなつもり無いんだけど…』
「祐樹との事バレたの？」
『見てたみたい。ママから聞いた。』
「そっか…さゆきは受け入れたって勘違いしてんだね…」
さゆきがあの光景を見ていた事は後にママ経由で聞いて更に胸が苦しくなった。
いくら中学生でも祐樹の力に勝てる筈が無いのは分かっていた。
壁に押さえ付けられた時、ふと蘇る記憶が頭を掠める。
あの時陽介と美羽が助けてくれなかったら何かされてたか想像しただけでも怖くなる。
そんな過去を知るのは美羽を含め、私の大切な仲間達だけだ。
サッカー小僧の彼らはずっと変わらない最高の親友だから…。
今日ここで嬉しさと苦しさを同時に味わうことをまだ知らない→←君の声が僕の胸を熱くしたり冷たくしたりするんだ
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作成日時：2013年4月27日 21時
