△11文字目 ページ13
.
次の朝、アパートの階段を降りると道路脇に見覚えのある軽車が止まっていた。
来てくれた手前無視するのは駄目か、と一晩散々迷った末大人しく車に乗ることにした。
車の後部座席に寄ってった所で、向こうが私に気付いてウインドウが開いた
「よォ、後ろじゃなくてこっち乗れ」
ピッと助手席を指した。
渋々、助手席のドアを開けて乗り込んだ。
「酔いは覚めたかァ」
「元々そんなに飲んでないから影響ない」
「そうかィ」
シートベルトをつけたところで、私は鞄の中から包みを出して不死川に突きつけた。
「んぉ、なんだこれ」
「中身おにぎり。…昨日のお礼。わたし寝ちゃったから。昼にでも食べて。包みは返さなくていい」
「まじ、わざわざ作ってくれたんかァ」
「別に。昨日のお礼って言ったでしょ。そんだけ」
「そーかいそーかい。有難く受け取るわァ」
さんきゅーな、と頭にポンと手を乗せられたので普通に振り払ってやった。不死川は気にせずに車を走らせた。
大学付近の通りに出たところで、「ここでいい、降ろして」と言った。
「学内の駐車場停めてくからそこで降りりゃいーって」
「いいから、ここでもう」
「…………あいよ、言っても聞かねえな。わーった、脇停めるから待て」
道路わきに車を停めたところで、車から降りた。
「帰りもここで待ってっから」
「いらない、普通に電車で帰る」
「乗ぉれって」
「いや」
それじゃ、さようなら。とバンと勢い良く扉をわざと締めて大学へ向かった。
大学の門に近づいたところで、「あれさねみんじゃない?」「運転してるのまじカッコイイよね」「助手席乗りた〜い」と女子共の声。
良かった、あそこで降りといて正解。
(あいつからの接触を避けなきゃ……)
昨日はまる一日何故か捕まってしまった。
大学に来てまで、また高校と同じ想いをするのはもう嫌だ。逆戻りだなんて御免だ。
『幼馴染だからって調子乗ってる』
『うざ』
『近づかないでほしいよね』
別に好きで幼馴染やってる訳じゃない、家がたまたま
隣だっただけなのに。だったら、幼馴染なんて関係性いらない、なんて何度思ったことか。
おにぎりなんて作ってしまったのは、少しの情けか。
(馬鹿だなあわたし…ほんと)
ズキリと胸が痛む。
この痛みに気付こうとするかしないか。
枠を飛び越えるか越えないか。
いつまでたっても心の何処かで揺らぎ続けてる私は、
ただの臆病物だ。
855人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふぐひらめ - はぁああぁ……最高……(溢れ出る幸せ) (2021年12月5日 22時) (レス) @page21 id: f76242864c (このIDを非表示/違反報告)
星空 - 続きが気になる!更新頑張って下さい! (2021年3月5日 8時) (レス) id: 8e029f144e (このIDを非表示/違反報告)
あゆゆ - ぎゃぁぁぁぁっっ!!え、死ぬんだけど笑笑実弥が一番好きなのでもう心臓もげそう笑続きめちゃ気になるー!!更新頑張って下さい! (2020年11月28日 1時) (レス) id: b8364d44bb (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - 花さん» 小鳥ちゃんの愛称で呼んで頂けて嬉しいです…!ツンデレ小動物小鳥ちゃんこれからも宜しくお願いします! (2020年11月20日 22時) (レス) id: d7b92a39ba (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - おはぎとだんごさん» 嬉しいです…(号泣) (2020年11月20日 22時) (レス) id: d7b92a39ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:氷雨 | 作成日時:2020年11月10日 13時