孤児の俺と金持ちの彼奴。【BL】

お金が1枚 ページ1

「なぁ、大丈夫か？」





今は小学校。そして中休みの時間。

やってはいけない廊下で、鬼ごっこをしていてぶつかって相手を転けさせてしまった。だから慌てて駆け寄り、恐る恐る転がした相手の顔を覗き込む。



倒したのは学校1、いやもしかしたら県で1番のお金持ちの息子と言われている同じクラスの子かも知れない。

髪色は日本では見かけない赤と茶を織り交ぜたような色(大人達はレディシュと呼んでいた気がする。)をしていたから直ぐにわかった。



廊下を走って、怪我させてしまったとすれば、学校の先生や院の先生にも怒られるだろう。

特にお金持ちの子供なら尚更。



「なぁ...返事しろよ。」



先程呼びかけても何も帰って来ず、もしかしたら死んでしまったのではないかと自分のした事の過ちが重くのし掛かる。


どうしよう、すごく泣きたい。




「な、なー...。」


段々と喉の奥が痛くなってきて、心も張り裂けそうになる。

相手にかける声もくぐもった音を含んでいた。




つんつん、と相手の頭を指で触りながら涙が流れないように必死に顔を硬くして我慢した。


すると、小さな泣き声がした。



自分は泣いていないのに、何故__。そう思ったのもつかの間、どこから聞こえたのか直ぐにわかった。


それは自分ではなく、下の方から聞こえていた。




「ｳﾞｯ__。うぇ...。」



ぐすぐす、と効果音がつきそうな泣き方だった。


その声が聞こえてきて、死んで無かったとホッとした。けれど周囲からはやはり転がした俺が泣かしたと思われていて、周りの視線が痛くなった。




「ごめん、ごめんな..!!謝るからなぐなよぉ。」



何故だか我慢したつもりの涙が流れてきて、どうしようもなくなった。

やっぱ泣こうとしてなくても誰かが泣いてたら釣られてしまうのかも知れない。



鬼ごっこをしていた俺だったが、いつの間にか鬼ごっこではなくなっていた。追いかけていたはずの友達が居なくなっていたのも理由の一つ。

お金が2枚→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す