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そりゃ、もうすぎたことだけど私は小さい頃、鳴が好きだった。
まあ近くにいたのが、たまたま鳴だっただけかもしれないけど。
でも、周りにグダグダ冷やかしを受けて、鳴も、私に対して意地悪ばっかりで、正直苦手意識の方があったかも。
他の女の子には王子モード全開だったのに。差別にも程があった。
「でも、昔は悪かったよ。Aばっかり態度悪いことして」
『いいよ、別に、昔のことだし、謝るぐらいだったら最初からやんなきゃいいじゃん』
「あの時の俺は子供だったの!」
『はいはい』
あの時の私は、なんだかんだで鳴の側にいてあげないとって心配してしまうんだ。
他の人に意地悪して嫌な思いされるくらいだったら、全部私が受け止めようって思ったくらいだし。
でも野球やり始めた時なんて、私は運動音痴だから、共有できないし。
成長していくうちに、体力の差、それぞれの時間があったりで、すれ違って、会話すらなくなった。
「ま、一也にフラれたら俺んとこ来なよ」
『どういう意味?』
「ご想像にお任せします」
『デジャヴを感じる』
「なにそれほかのやつにも言われたわけ?」
『多分?』
「一也?」
『違う気がする』
「なんだそれ、一也も大変だな、まあわかってたけど」
くしゃ、と頭を撫でられた。
あ、小さい頃を思い出すな。
いつでも近くに鳴がいて、こうやって頭をくしゃくしゃと撫でてくれたっけ。それがなんだか心地よくて。
でも今は…
『鳴、やめてよ』
「あ、わりぃ」
『今、私は御幸の彼女なんだから』
「んだよ、わかってるっての」
『昔だったら嬉しかったのかもね』
なんてイタズラ心で言うと、鳴は、顔が真っ赤になっていた。多分夕陽のせいだ。
今頃気づくなんて遅いよ。
そうだよ、私は鳴が好きだったよ。
***
あえて二度言われせみるやつ…
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作者名:ぐみ | 作成日時:2020年4月3日 6時