Will get married.【梶裕貴】

…また住所教えて ページ32

「さーて、谷戸お待たせ。存分に話せ」

「手短に終わらせますって」


教壇に立って見渡すと、なんで私が最後なのか分からない顔をしている人と分かっている数名の区別がはっきりついた。


「3年間…まあ、クラス替えもあったけど楽しく過ごせました。ありがとうございました。

あと隠してた事があるんですけど

…今まで通院するから早退してたのとか遅刻してた日が何回かあったんですけど、嘘です。」



大したざわめきは起こらず、ぽかんとしている人がほとんどだった。


「実は高1から声優のお仕事してました。意外といろいろ出てます。」


ぽかんとした中で1人の男子が携帯で即座に私の名前を検索して「本当だ…」と呟いた。


「これからもその活動は続けていくので…その…ど、どこかで見たら思い出してください！
ありがとうございました」


席に着くと凛を除いた周りの席の子から質問責めされたけど、とりあえず後に回した。

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「Aちゃん！サイン書いて！」
「あ、私も！あと一緒に写真撮ろ！」

「いいよ〜」

「俺コレにサインしてくれ！」

「卒業証書はやめなよ…」

「なんかキャラの声やって！」

「今日みんなでカラオケ行った時ね」


サインやら写真やら撮り終えると、悠のお母さんと悠と私とお母さんの4人で帰った。


「Aはこの間高校生になったと思ったのにもう卒業か〜早いわね」

「悠だってこの前退院したばっかなのにね」

「私高校生になってから3年経ってるんですけど」

「俺も退院してから結構経つぞ…」

そんな私たちの言葉も耳に入っていないのか、お母さん達は夢中で話していた。


「…悠は一人暮らしするの？」

「するよ？」

「へー、いつ引っ越し？」

「明後日」

「…また住所教えて」

「わかった」


それが、最後の会話だった。

道が分かれると、手だけ振ってお互いに家まで帰った。

…結婚しようか→←ありがと

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