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それで十分だよ。 ページ11

「そっちの席でいい?」

「お兄ちゃんの座りたいとこでいいよ」


とりあえず買い物を済ませ、近くのカフェに入った。

「………」

「……」

入ったはいいけど、何を話したらいいのか分からなかった。

「……この間はごめん」


沈黙を破って口を開いたのはお兄ちゃんの方だった。

「この間っつってもだいぶ前になるけど…悪かったな」

「…うん」


「…梶さんと、どう?」

「一応、卒業したら籍入れようかと…」

「…そっか」

「お兄ちゃん仕事は?」


お兄ちゃんも一応、声優なんだよな

「全然だめ。オーディション全部だめ。

入ってもガヤとか、良くてモブキャラ。」


「そうなんだ…」


「今日もオーディションの話が来て、やってきたけど周りはベテランばっかで」

「そっか…」




諦めないで、とか

頑張って、とか言ってもいいのか分からなかった。


「彼女とはヨリ戻したよ。」


「よかった、幸せにしてあげてよ」

「うん…ごめんな」

「もういいよ、

お兄ちゃんが私に対して思ってたことも、別に気持ち悪がるとかないし

お兄ちゃんはお兄ちゃんだから。

私にとって血が繋がってないとか関係ないし」


「…ありがとな」


「あ、そうだ。

オーディションとか頑張るのはいいけど、本業は大学生だからね?

ちゃんと単位とって、しっかり卒論も仕上げるんだよ?」

「わ、わかってるよ」

「私、大学受かったから」

「大学行くのか?」

「うん、ほんとにもしものために行っとかないと」

「そっか、頑張れよ。あ、わりぃ、ちょっと…」



そう言って携帯を持つと席を外して電話に出た。


壁の陰から見えるお兄ちゃんの横顔は笑顔だった。

彼女かな…


「わりぃ、そろそろ帰んねぇと」

「なんか用事?」

「いや、彼女。遅いって、怒られた」


そう言ってため息をつくお兄ちゃんは嬉しそうに見えた。


「帰ろっか」

「駅まで送るよ」




ずっとうやむやにしてきたけど、はっきりできてよかった。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、

私は私。

お兄ちゃんには彼女さんがいて

私には梶くんがいる。

それで十分だよ。

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rinon(プロフ) - 1作目から読みました!読んでいてすごく面白かったしドキドキしました笑とても素敵な作品をありがとうございました! (2018年10月11日 21時) (レス) id: f99e4cad7a (このIDを非表示/違反報告)
梶くんLOVE - すっごく面白かったです!何度も読み直しちゃうくらいこの作品大好きです! (2018年9月17日 19時) (レス) id: 30bbe2ba04 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 1作目から三日かけて読みました!ものすごく内容が凝っていて、面白かったです! (2018年3月6日 2時) (レス) id: a8be3044ec (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 1作目から読ませていただきましたっ!!!本当に楽しかったです! (2018年2月4日 11時) (レス) id: 967f86594e (このIDを非表示/違反報告)
霜架 - 2日で、読みきりました!とっても面白かったです!素敵な作品ありがとうございました! (2017年6月24日 11時) (レス) id: 6ed6169ed9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:simuko | 作成日時:2015年12月22日 21時

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