【ＢＬ】壊れた人形 (ページ13)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:28,074 hit

１０ページ13

ギラギラと光っている目で見られて固まっていると、
優が追い討ちをかけるように通常より低い声で僕の耳元に囁いた。

「……君は人形なんだよ？ただの人形、じっとしてればいいんだよ」

自分が当たり前のことを言って、僕が間違っているかのような言い方にに恐怖と狂気を感じる。

“主人の言っていることは例え間違っていても正しい。”

それが頭の中に染み付いている所為なのか、説得されてしまう。

しばらくの間、顔を伏せてじっとしていると、僕を掴んでいた手が外れた。

「踊ってよ」

唐突に言われた一言に戸惑う。
そんな戸惑っている姿が面白かったのか、見下すような目で笑っている。

「踊り子人形はそういう人形だろ、さあ早く」

急かすようにそう言われたが、僕の身体にはいつもの頭に響くような声が聞こえない。

前の主人の時は踊れと言われなくとも、自分でこの人の為にと思えば動けた。

目をぎゅっと閉じて“踊れ踊れ”と自分で念じるように何度も繰り返す。

そんな姿に痺れを切らしたのか、舌打ちが聞こえてきた。

「踊れないの？人形はその為に作られてんのに使えねえな」

朝とは違い優しさのかけらもない、冷酷だ。

前の主人は優しい時は優しかったし、こんな冷たいことなんてなかった。

……前の主人と優を比べ過ぎてる気がする。

僕は何だかんだ前の主人と一緒がよかったな。

優は冷たいし、優の弟の蓮もいろいろ怖い。

この兄弟たちには狂気を感じる。

「もういいよ、帰って」

僕を扉まで押して、突き飛ばすように扉の外に押し出された。

ちょうどお腹も空いていたし、早く帰りたかった僕的には好都合。

閉じてしまった扉の奥からは割れ物のようなものが割れた音がした。

同時に水の漏れる音も聞こえたから、多分花瓶が割れたんだろう。

可哀想な花。

明日には狂気を隠して普通にしているのかな……なんて。