36,トラウマ【side目黒】 ページ37
真ん中に置かれたお菓子を頬張りながら、俺は言った。
明らかに元気が無くなってるAさん。
「とりあえず、安静にしててください、仮にも倒れたんだし」
「あれは、トラウマというかそう言うものだから、大丈夫」
引っ掛かった。
いつものAさんなら、引っ掛かからないのに。
「トラウマって、なんすか？」
「あ、えっと・・・」
「自分から言ったんすよ？」
「あー、わかったわよ！」
そして、Aさんは話してくれた。
初めて付き合った彼氏は１つ歳上の人だった。
でも、好きで付き合った訳ではなかったと。
「１つ上の先輩だったの、かっこよかったんだけど。
でもね、私、その先輩からレイ プされてね、無理やり付き合ってたんだ」
「最悪男だな・・・」
「学校の憧れの先輩だったから、レイ プされたんて言えないし、言っても信じてくれなかった。
逃げたかったけど、無理だったの。
私は心がないまま、その先輩と付き合ってた。
周りからは『お似合いだね』なんて言われてたけど、そんなんじゃない。
最初っから崩壊してたんだ」
「どれくらい、付き合ったんすか？」
「１年ちょっとかな？」
俺は頭を抱えた。
なにより、Aさんが淡々と辛かった事を言うのが、淡々だから余計辛かった。
「それに、私たちのお付き合いに、異変を感じてくれてたのが、ひーくんだったの」
あー、ヒーローの登場ね。
そりゃ、Aさんも好きになっちゃうよね。
「まぁ、あとは、お察しの通りかな？」
「元カレの記憶が、トラウマとして、出ちゃうって事ですか？」
「そうみたい」
「じゃあさ、」
「？」
「俺とキスしてみない？」
「えっ？」
大きく目を開けるAさん。
まぁ、俺も下心ないって言ったら嘘になるんだけど。
「阿部さんでは、トラウマが出ちゃったでしょ？
俺では？俺ではでないかもよ？」
「そ、そんなに気軽にキスなんてしません！」
「そっかー、でも、倒れても大丈夫じゃないすか、ここなら」
「そうだけど・・・」
「ただの可愛いコーハイからのちゅーのプレゼントってことで」
俺は、Aさんの頬っぺたにキスをした。
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作者名：るる | 作成日時：2020年5月13日 6時
