20,ぬくもり ページ21
そんな言い方したら、翔太くんも目黒くんも、私の家に来てるんですけど？って、思ってしまった。
まぁ、会社の後輩に手を出すほど飢えてない。
「翔太くん、その言い方だと、シたいみたいじゃないっすか」
「いや、Aちゃん先輩だよ？そりゃ、ね？」
「私に可愛く、ね？って言われても困る」
「俺は、翔太くんにちゃんと勝ってからAさんを抱きますね！」
「だから、そういう話じゃないし、いいから！！！
もー、女一人に下ネタとか勘弁してよ・・・」
「こんなの、下ネタにはいらない」
「うんうん」
「うわぁ、男子ってそういう生き物なんだ・・・」
無駄に悟りを拓いた私。
でも、気をそらせそうだなぁと思ってたら、それに勘づいたであろう目黒くん。
腕を掴まれて、ぐいっとちょっとだけ寄せられ、真剣な面持ちで話す。
「で、誰の？」
なんか、その瞳に勝てなかったんだ。
ずるいよ、目黒くん。
「元カレ、の」
「あー、照だろ？」
「・・・なんで、知ってるの？」
「高校、一緒だったし、照はAちゃん先輩の話ばっかりだったからさ」
そうだったんだ・・・って、思った安堵感よりも、後悔が大きい。
不意に込み上げてくる涙に、私は我慢が出来なかった。
だってまださ、半年しか経ってないんだよ？
「ふ、ふぇ・・・」
「！？」
「Aちゃん先輩、泣かないで」
そっと抱き締めてくれた、翔太くん。
声も優しくて。
流れる涙を拭ってくれた。
ありがとう。
後輩に、こんな姿を見せるなんて・・・。
でも、なんかその優しさがあたたかくて。
ちょっと、翔太くんに甘えてしまった。
でも、溢れる涙はとまらなくて。
目黒くんの顔は見えるほど余裕はなかった。
目黒くんは、こんな私の姿をどう見ているのだろうか？
引いてるかな・・・。
おんなじ会社の後輩に、目黒くんからしたら先輩か、先輩が泣いて抱き付いてるなんて。
数分、ちょっと胸を借りた。
「うん、もう、大丈夫」
「本当に？もっと借りててもいいんだよ？」
「やだよ、目黒くんにも見られてるし」
「目黒が居なかったら、甘えてくれるの？
目黒、あっち行け」
「・・・」
「・・・目黒？」
目黒くんは何かを考えているようだった。
騒ぐかと思ったら、小さい声で「っす」って返してた。
先輩として、申し訳ないことをしてしまったな。
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作者名：るる | 作成日時：2020年5月13日 6時
