［センラ］S u g a r . (ページ21)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:21,146 hit

# Sugar 21 ページ21

優が去っていってから
急いでご飯を食べ進めて社内に戻ると
まるで飼い主の帰りを待ってた犬みたいに、先輩が抱きついてきて。
幸い周りにはまだ誰もいなかったから見られてはなかったけれど。

「やっと帰ってきてくれた…寂しかった、Aがあんな奴の所行ってもうたから」

「……ごめんなさい」

謝る必要も無いのに口から出てくる謝罪の言葉
なおも抱きしめられたまま、壁際に押し寄せられる
さら、と前髪が持ち上げられて
その甘いとろけた瞳で見つめられる。

「…キスしたい」

「さっきもしたばっかり、」

「我慢できへんの。させてや、あかん?」

おねだりする子供みたいだ。
断るわけにもいかずゆっくり頷くと、先輩はすぐに嬉しそうな顔をして顔を近づけてきた。

…優の時は拒んだけど、先輩だと大丈夫。
やっぱり、私は先輩が好き。
奥さんのことなんて今はいいや。
少しだけでもこの人のそばにいれたら…

「センラさん!」

不意に聞こえてきたその声ではっと意識が現実に戻される。
入口付近から聞こえてきた優しい女性の声。

先輩は私からすぐに離れてどこかへ行ってしまう
そっと自販機の影から覗くと、どこか上品な雰囲気を醸し出した綺麗な女の人。
その人の薬指にも先輩と同じ指輪。

……あぁ。

そういうことだ。
いや、そういうことなのかどうかもわからない。
その瞬間その女性に対して抱いた " 劣等感 "。
それは紛れもなく、私が先輩の1番になれないことを物語っていて。

足音を立てないよう、
先輩とその人に気づかれないよう、
ゆっくりとその場を去った。