［あほの坂田。］仔犬拾いました。~another story~ (ページ6)

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「どうして辞めるんですか」

「…私なりの罪滅ぼし」

こうするしか無かった
そう飯田さんは呟く

「どこか遠くに行って、1人で暮らすの」

それが私の今の望みかな
無理に作ったような笑顔を浮かべる先輩

「優に伝えておいてくれないかな」

……坂田くんのことだ
私、そういえば坂田くんの名前知らなかった
…違う、今はこの人に嫉妬してはだめ。

「いいんですか」

「…何が」

「私、正直先輩のこと嫌いでした」

「…」

「でも尊敬してました」

飯田さんは黙り込む
喉に詰まって中々出てこない言葉を絞り出す
…今言わないと、永遠に伝えられない気がして

「先輩としては大好きだけど人間としては嫌い」

「………うん」

「こんなお別れの方法、飯田さんらしくない」

「私らしいってどんな感じなの」

「…わかんないです」

呆れた顔で笑う飯田さん
でもそれは心からの笑顔だ。

ずっと会社を休んでて
でもわざわざ誰もいないこの時間に私に会いに来てくれたこと
何か、意味があるはずなのに

「…帰ろうかな」

「ま、待ってください」

「私にもプライベートがあるんだけど」

「もっと坂田くんに伝えること、ないんですか」

さよならだけじゃ少なすぎる。
もっとあるはず
今、飯田さんが大好きだった人に伝える言葉

「……私のことは忘れて幸せになって」

「…え」

「とってもお似合いだよ」

しばらくの沈黙。
そのまま飯田さんは黙って喫煙所を去った
タバコの匂いと、甘い香りを残して。