［あほの坂田。］仔犬拾いました。~another story~ (ページ30)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:38,795 hit

# 30 ページ30

ぱっと離れた坂田くんの目は
相変わらず温度を感じられないくらい冷たくて
それが余計に私の胸に突き刺さる

「ごめんやけど、許されへん」

坂田くんがぶっきらぼうに言い放つ

「まぁ俺、いつも優しくしてると思うけどさ」

…痛いほど実感してる。
坂田くんは優しすぎる。いつもいつも。

それに甘えてたのかな
ちょっとぐらいって、高くくってたのかな

「だからってそれはちゃうやろ」

「…ごめんなさ、」

「……謝っとけばいいんとちゃうから」

涙でボロボロの私の脇を通り過ぎていく
振り返る力も残ってない私は、乱雑に閉めるドアの音だけが耳に響く

…神様って、意地悪なの？
こんなの見てて喜んでるの？楽しんでるの？

視界は涙でぐちゃぐちゃ
泣き疲れて呼吸も上手くできない
……私、終わった。

ようやく掴んだ幸せを、自分から手放したんだ

数時間前の自分を殴りたい

ほら、こんな時に

" 誘ってきた課長が悪いから "

そういう思考に傾きそうになる自分が心底嫌いだ

ベッドまで行く気力もない

ソファに寝転んだ私は、吸い込まれるように意識を手放した。