［あほの坂田。］仔犬拾いました。~another story~ (ページ29)

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# 29 ページ29

アパートの階段を上って鍵を差し込むと、ドアが開いていた。
ガチャ、と開ける

…けど、坂田くんの反応はない

静かにリビングへ向かうと、坂田くんは地べたに座り込んでいた

「あ、あの、坂田くん、ただい」

ま、と言う前に坂田くんが振り返る
…その瞳は、今まで見たことがないほど冷たくて
動揺して固まっていると、坂田くんがゆっくりと口を開く

「…あいつ誰」

聞いたことがない、そんな声。
そんな低い声、今まで1回も聞いたことない。
…怒ってる。すぐ分かる。

恐怖と驚きで何も言えず黙り込んでいると、追い討ちをかけるかのように坂田くんは問いかけてくる

「聞いてんねん。答えて」

「か、会社の、せんぱい、」

「…男と飲みに行くんや」

呆れたように吐き捨てる坂田くん
違う、そんな、

男好きじゃない。ただセンラさんに…課長に、誘われて、今日は坂田くんがいないから、だから、
まさか見られてるなんて、気づかれてるなんて思わなくて、

…違う。こんなの、全部良いように言ってるだけだ

「違う、違う…の、」

「何が違うん」

「………っ、」

立ち上がった坂田くんは、私の手首を強く掴む

「いっ…」

「他の男で汚れてほしくないねんけど」

「や、坂田く………」

遮るように唇が重なった
そのキスは、私の知ってる坂田くんのじゃなくて
痛くて、辛くて、苦しくて

溢れ出る涙が、つぅ、と頬を伝った。