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「そんな身構えなくても何もしないよ〜」
体が強張っている俺に、コンちゃんは困ったように笑った。
そうは言われても、一応友人を死に追いやろうとしていた人物に変わりはないので楽にしろと言われても無理な話だ。
「俺も今日はほんとにオフだからさ。今ここでAを見つけても殺したりしないよ」
というか俺は元々Aを殺したくなんか無いんだけどねぇ。
そう呟くと彼はネクタイのラックの近くによる。
今日はネクタイの新調にでも来たのだろうか。
コンちゃんは奇抜なデザインのネクタイを一個手に取ると、首元に重ねてキメ顔をかます。
思わず笑いがこぼれた。
いや、面白いところを説明しろと言われても説明出来ないが、なんというか彼の言動がシュールで思わず笑ってしまった。
そんな俺を見て満足気にすると、今度はえーい!と端末で俺を写真に撮った。
「写真は残るからいいよね」
よしよし、出会い記念に保存。っと。
嬉しげにまた端末を操作するコンちゃん。
何かしばらく前にこの光景を見たような気がした。
「…こ、コンちゃん」
「なに?」
渾名で呼ぶと、特に指摘もなく普通の返事が帰ってきて何故かひとまず安心する。
「さっき、Aのことは殺したくなんか無いって言ってたのはどういう意味?」
じゃあ殺さなければいいじゃないか。
なぜ殺したくないのにAを殺そうとする集団に入っているのか。それが謎だ。
戦闘機の離陸時の様子でも、Aはコンちゃんの名前を呼んでいたくらい悪くない関係なんだろうし、実際コンちゃんも手を笑顔で振り替えしていた。
「そのまんまの意味だよ。Aには生きてほしいけど、今の生半可な状態じゃ殺さざるをえないから、俺なりに頑張ってるんだからね」
Aと似て、核心を避けまくった回答をする。
結局何を言っているのかこちらとしてはわからないので非常にやめてほしいところだ。
もう少し詳しく話を聞こうとすると、コンちゃんはあ!と外を見て声を上げた。
「もう少し話したかったけど今日はもう行くね」
俺の肩を叩いてすれ違いざまに耳元で何かを言うと、そのまま店の外へ歩いていった。
コンちゃんの言葉を咀嚼できずに、数秒どういう意味か考えていると、店内にドアのベルが響いた。
「あれ、らっだぁじゃん」
「あ、カニピン」
ピンクの髪を揺らしたカニピンクもといなるせは、雑談をしながらラックへ手を伸ばす。
コンちゃんの言葉はまた今度考えることにした。
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わらび(プロフ) - じゃーん、えっちふんさん» コメントありがとうございます!コメ主さんの言葉選びがとても素敵でこちらが感動してしまいました。自分の目指す雰囲気とキャラクター像が伝わっていて非常に嬉しく思います。少しずつの更新にはなりますが、楽しみにしていただけたら幸いです。 (8月7日 1時) (レス) @page34 id: ac8a81db8b (このIDを非表示/違反報告)
じゃーん、えっちふん(プロフ) - 薄暗い憂いを帯びてる雰囲気と男主くんのあっけらかんとした感じがちょうどいいバランスで沼で最高です😭自分のペースで更新頑張ってください!! (8月7日 0時) (レス) @page34 id: 1b7c50ba33 (このIDを非表示/違反報告)
わらび(プロフ) - 管理人さん» コメント本当に嬉しいです!ありがとうございます。一回の更新が少なく満足感が無いかもしれませんが、ぜひ今後も毎日の楽しみにしていただけたら幸いです。 (8月6日 12時) (レス) id: ac8a81db8b (このIDを非表示/違反報告)
管理人(プロフ) - コメ失礼しますm(_ _)m貴方様のrd医院長が本当に好きです!毎回更新されるのが楽しみで仕方ないです!これからも更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (8月6日 3時) (レス) id: af5b844ff4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しまなか | 作成日時:2023年7月28日 20時