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誰かがいる。
店に入る前に思ったことはこれだった。
平日の昼下がりだと言うのに、窓ガラスから見えたのは人影。
ギャングかなにかだろうか。
まぁ、タトゥーを入れる時にとあるギャングのボスと鉢合わせして殴り勝った事があるため心配な訳では無いが。
やはり殴り合いの練習は役に立つ。
病院前でやっていることも無駄ではないということだ。
構わず店へ入るとドアのベルがカランカランと爽快な音を鳴らす。
奥で服を見ていた男は、半ば反射的にといった様子でこちらを見た。
ぴしりとしたシワ一つ無いスーツに赤のネクタイ。
なにやらよくわからない四方にギザギザの模様がある面布を横にしてつけている。
深い紺色の髪の男はこちらを見ると、ども〜とにこやかに笑って服の方へ視線を戻した。
見たことがある男だ。
自分の中の記憶を急いで遡って確信する。
先日のAの追手の1人。Aが去り際に手を振った時に笑顔で振り返していた男。
そんな男が、今服屋で服を選んでいる…?
頭が混乱しそうだが、Aが言うには俺に危害を加えるつもりは無い上に悪い奴らでは無いらしいので自分から関わりに行くことが無ければこちらに被害が来ることはないか。
服屋に来たのだから、他の客ではなく服の方に注目しよう。そうしよう。
今日は限界大学生スタイルこと自分の私服を新調しようと思い、かけてある服の数々に手を伸ばす。
別に今の私服に満足していないわけでもないし、ボロくなったわけでもないが、種類が増えることは悪いことではないだろう。おしゃれってやつ。
数多の服の中から一つを取り出す。
これなんかいいかもしれない。が、限界大学生というよりコソ泥みたいな外見になる気がした。
やめよ。
あぁ、こっちなんかも悪くは
「ねぇお兄さん。こっちのほうがカッコよくない?」
息が詰まる。
気づかぬうちにすぐ隣にいた先程の男は何食わぬ顔で、いやこっちかな?とハンガーラックを漁っている。
「あ、びっくりしちゃった?ごめんね」
固まる俺にまた人の良さそうな笑みを浮かべた男はすぐ後ろにあった靴を試し履きする為の椅子に腰掛けた。
Aと笑顔の種類は違うが、A並みによく笑う男だな。
「俺の名前はコンタミ。お兄さんの名前は何?」
「らっだぁ、っすね」
コンタミ、と名乗った男は何故かうんうん、と頷くと、俺のことはコンちゃんでいいからね〜と笑った。
明らかに俺より年上だが、相手のふんわりした雰囲気に負けてコンちゃんと呼ぶことにした。
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わらび(プロフ) - じゃーん、えっちふんさん» コメントありがとうございます!コメ主さんの言葉選びがとても素敵でこちらが感動してしまいました。自分の目指す雰囲気とキャラクター像が伝わっていて非常に嬉しく思います。少しずつの更新にはなりますが、楽しみにしていただけたら幸いです。 (8月7日 1時) (レス) @page34 id: ac8a81db8b (このIDを非表示/違反報告)
じゃーん、えっちふん(プロフ) - 薄暗い憂いを帯びてる雰囲気と男主くんのあっけらかんとした感じがちょうどいいバランスで沼で最高です😭自分のペースで更新頑張ってください!! (8月7日 0時) (レス) @page34 id: 1b7c50ba33 (このIDを非表示/違反報告)
わらび(プロフ) - 管理人さん» コメント本当に嬉しいです!ありがとうございます。一回の更新が少なく満足感が無いかもしれませんが、ぜひ今後も毎日の楽しみにしていただけたら幸いです。 (8月6日 12時) (レス) id: ac8a81db8b (このIDを非表示/違反報告)
管理人(プロフ) - コメ失礼しますm(_ _)m貴方様のrd医院長が本当に好きです!毎回更新されるのが楽しみで仕方ないです!これからも更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (8月6日 3時) (レス) id: af5b844ff4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しまなか | 作成日時:2023年7月28日 20時