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「…に…さん。お兄さん」
聞き覚えのない声で目が覚める。
顔に乗せていた面を手でのけてその声の主を見やる。
軽薄そうな男は俺と目が合うと、にこりと人の良い笑みを浮かべた。
黒キャップにサングラス、黒い半袖のその男はどう見ても不審者だ。
まぁこの病院はギャングなども平気でくるのでなんら変わったことではないが。
というかこの街では犯罪者が一般人だ。
「あ、どもー…。えっと俺になんか用すか」
話しかけられたサングラス男は何故か上機嫌で自分の胸を指さした。
「骨が折れたんで治してもらいに来たんだが、ここ病院だよな?」
合ってるか?君以外誰もいないんだけど。と辺りを見る仕草をする。
まだ誰も帰ってきていないらしい。
「合ってますよ〜。一応俺も医者なんで治しときますね」
寝起きで悪いが早速治療に取り掛かろうと立ち上がると、男は俺が医者だと思っていなかったのか少し戸惑いながらお願いしよう。と返事をした。
俺を知らないなんて珍しい。
自分で言うのも何だが、この街唯一のこの病院で一番仕事が早いかつ警察側なのは俺だ。
いや、とろさんもそう。
周りからは院長などと呼んでもらっているため自負はしている。そのかわり責任も重い気がするが。
ギャング側に新人でも入ったのだろうか。
治療しながら聞き出すのがベストか。
「お兄さん見ない顔ですけどどこかのギャングに新しく入ったとかそういうやつです?」
大人しく治療を受けている男はそれを聞いて少し笑った。
「違う違う。組とかに属しているわけじゃない」
「俺は、ずっと一人で色んなとこ荒らして回ってるんだ」
いたずら小僧のような顔を浮かべた男は、最高だろ?とまた笑う。
よく笑う人だ。治療しにくいから笑うのはやめてくれ。
それにしても「荒らして回る」か。微妙に質問の意図からそらされた気がするが関わって得するタイプではないことはよくわかった。
「はいもう大丈夫ですよ〜。じゃあ請求書送っとくんで」
スマホを取り出してはたと気付く。名前を聞かなければならない。
少し黙った俺を見て察したのか、男は名乗った。
「俺の名前はA。アドレスも必要ならやるからそれで請求できるんじゃないか?」
知らんが。と首をかしげながらスマホを取り出してアドレスをこちらに送ってくる。
それを記録し、請求書を送った。
「お、きた。恩にきる名前も知らんお医者さん」
じゃまたな!と男_Aはすぐそこにあったバイクに乗って去っていった。
「嵐か何かか」
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わらび(プロフ) - じゃーん、えっちふんさん» コメントありがとうございます!コメ主さんの言葉選びがとても素敵でこちらが感動してしまいました。自分の目指す雰囲気とキャラクター像が伝わっていて非常に嬉しく思います。少しずつの更新にはなりますが、楽しみにしていただけたら幸いです。 (8月7日 1時) (レス) @page34 id: ac8a81db8b (このIDを非表示/違反報告)
じゃーん、えっちふん(プロフ) - 薄暗い憂いを帯びてる雰囲気と男主くんのあっけらかんとした感じがちょうどいいバランスで沼で最高です😭自分のペースで更新頑張ってください!! (8月7日 0時) (レス) @page34 id: 1b7c50ba33 (このIDを非表示/違反報告)
わらび(プロフ) - 管理人さん» コメント本当に嬉しいです!ありがとうございます。一回の更新が少なく満足感が無いかもしれませんが、ぜひ今後も毎日の楽しみにしていただけたら幸いです。 (8月6日 12時) (レス) id: ac8a81db8b (このIDを非表示/違反報告)
管理人(プロフ) - コメ失礼しますm(_ _)m貴方様のrd医院長が本当に好きです!毎回更新されるのが楽しみで仕方ないです!これからも更新楽しみにしてます!頑張ってください!! (8月6日 3時) (レス) id: af5b844ff4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しまなか | 作成日時:2023年7月28日 20時