【VCRGTA】俺とお前と、【rd】

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彼の出処はよくわからない。
この街で暴れまわり、一日に一回以上は顔を見るような奴らのことを調べるノリで調べても引っかかりやしないからだ。

「…っかしいな…………」

彼が旅行客なのであれば宿などで足はつくはずだし、ロスサントス市民なのだとしたら今の時点で簡単に調べられてもいいはずだ。

「何してるんですか？」

「？…あぁ、叶さん。いや、最近気になる人を見かけまして」

調べてるんですよ。とpcに視線を戻しながら言う。
叶さんはふーん。とこぼしながら俺が聴取の際に取っていたメモを見やった。

「A…さんですか。うーん、聞いたこと無い名前ですね」

「俺も聞いたこと無いんですよね。あんなに目立つ見た目ならわかる気がするんだけどな…」

黒キャップに黒サングラス、黒シャツの男。
明らかに不審者だというその目立つ風貌にも関わらず、その姿に見覚えはない。
服を変えている線が濃厚だが、サングラスを外した顔はおろか名前さえピンとはこなかった。

「とりあえずギャングではないっ…と」

手元の紙にメモを取りながら警察ネットワークを駆使した資料を見つめる。
叶さんは出来ることが無いと感じたのか、じゃあ巡回行ってきますね。と部屋を後にした。

時計の針の音と、タイピング音。そして呼吸音。
それだけが部屋に響いていく。

数十分後かけて、やっとAさんの資料を見つけ出した。
改めて資料を眺める。

「普通だな…」

その資料は驚くほどに普通だった。
なにより、調べるのに時間がかかった理由が「あまりにもただの一般市民すぎて特筆することもなく、調べにくい」であったのだ。

真っ白すぎる資料を訝しげにもう一度読むが、残念ながら怪しい点は全くない。

誘拐容疑(誤認ではあったが)の発見の際に、端末を慣れなそうに操作していた彼は、生まれた時からこの街にいるらしい。
彼の職業はフリーターのようで、マンションに一人暮らし。

普通だ。

しかし、なんとも言えない違和感が拭えないのも確かだった。
微妙に噛み合わない何かがある気がした。
が、そんなものいくら考えても答えが出てくる気はしなかった。

「…俺も巡回に行くかなぁ」

これ以上時間を無駄にするわけにもいかず、消化不良のままpcを閉じた。

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