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「こればっかりは、歌詞さんに相談してもしょうがないことだろうしな……あの陽気な馬鹿野郎は、フォローや事後処理に向いている性格じゃ、ないでしょう。まあ、私も人のことは言えないんだけど……って、あれ」
ころっと忘れていた大事なことを、ふとした瞬間に、なんの契機もなく思い出すことはよくあるけれど、このときがまさにそうだった。私は、肩にかけていたボストンバッグのチャックを開けて、中身をチェックする。チェックするまでもなく、その結果はわかっているのだけれど、なんていうか、悪足搔きだった。案の定＿＿相川から受け取ったあの封筒は、ボストンバッグの中にはなかった。
歌詞さんに渡す仕事料の入った、あの封筒。
「座布団の脇に置いたまま、忘れてきちゃったか……あ―あ、どうするかな」
お金のことだから早めに済ませておいた方がいいのは確かだが、けれどそんな取り立てて急ぐというわけでもないし、明日また学校で会ったときにでも受け取ればいい話ではあるのだが……どうしよう？
そんなことはないとは思うけれど、本当はちゃんと服のポケットにでも入れていて、それを、天宮と電話しながら歩いている内に、気付かず落としてしまったという可能性もなきにしもあらずだから、念のために相川に電話をして確認を取った方がいいのか……いや。
自転車を押しながらの歩きだったから、そんな距離を稼いだわけでもない、ペダルを漕いで戻れば、すぐさま民倉荘に到着するだろう。ならば、今からでも取りに戻る方が正着手だ。
時間が時間だから、最悪の場合相川の母親と顔を合わせる羽目になるかもしれないが、しかし、話に聞く相川の母親の多忙さを考えれば、その確率は無視していいほどには低いはずである。
電話で済むと言われれば確かにその通りなのだけれど、相川とは、会えるチャンスには少しでも会っておきたいからな。
アピールの仕方はわからないけれど。
少しは恋愛気分を味わわせてもらうとしよう。
「んじゃ、まあ」
サドルにまたがりつつ、自転車の方向を反転させて＿＿
私は、雨が降ってきたのかと思った。
雫が頬に触れたから、とか、そういうことではなく、自転車を反転させたすぐ先にいた＿＿まるで私のことを今までずっと尾行していたかのように、すぐ先にいた『人物』の格好が、私の視界に入ったからである。
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灰猫(プロフ) - 梅茶漬けさん» 梅茶漬けさんコメントありがとうございます！ずっと更新していなかったにも関わらずお気に入り登録を外さずにいてくださりありがとうございます！ちまちまですが頑張って化だけでも完結まで持って行きたいと思います！ (2021年8月3日 19時) (
レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - れいさん» れいさんコメントありがとうございます！一年以上更新してなかったこの作品を発掘してくださっただけでもありがたいのにそんなありがたいお言葉まで……こちらこそ読んで頂きありがとうございます！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - RONONさん» RONONさん、コメントありがとうございます！たくさん好きと言って頂けて嬉しいです！！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
梅茶漬け(プロフ) - 更新ありがとうございます！！とても素敵な作品だったので通知が来た時はとても嬉しかったです…！これからも無理せず灰猫様のペースで頑張ってください、応援しています！ (2021年8月3日 2時) (レス) id: 38bd223230 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 一気見しました。すごい好きです！作ってくれてありがとうございます←いきなり (2021年6月27日 12時) (レス) id: 1e82b4fb9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2020年6月8日 1時
