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「ともかく、月崎志麻や」
そんな会話で緊張が解けたのか、ようやく、私の制服から手を離して＿＿隠していた半身も歌詞さんの前に晒し、そして、例の堂々とした自信たっぷりの迷いのない態度で、右手を胸の前に、月崎は名乗った。
「阿良々木先輩の後輩や。初めまして」
「初めまして。伊東歌詞太郎です、お坊ちゃん」
月崎がにこにこしているのに対して＿＿
歌詞さんはにやにやしている。
にこつくのとにやつくの、字面上は一字違いの似た印象だが、しかし、傍で見ているこの身としては、受ける印象は全然違う、むしろ対極といってよかった。笑顔って、ただ笑顔であればいいだけじゃないんだなあと、痛感させられる。歌詞さんも歌詞さんで爽やかな笑い方ではあるのだが、こいつはなんだか、爽やか過ぎて、逆に不快なのだ。歌詞さんの場合、造形の全てが嘘っぽく仕上がっているのである。
「……ふうん。Aちゃんの後輩ってことは、ツンデレくんの後輩でもあるんだね」
まるで月崎の背中を見ているかのような、焦点をずらした遠い目線で、歌詞さんはそう言った＿＿それは単純に、相川が私と同じ三年生だから、当然月崎は相川の後輩でもある、という意味では、なさそうだった。
勘繰り過ぎかもしれないけれど。
「歌詞さん＿＿とりあえず、まずはこれ、渡しとくよ。そのツンデレくん、相川から」
「ん？ なんだい、その封筒？ ああ、お金ね。お金お金。よかったよかった、そろそろ生活に困ってきていたんだよ。これで梅雨まで凌げるさ。雨さえ降ってくれれば、なんとか喉の渇きを癒せるから、それまでの我慢だと思っていたんだけれど」
「多感な少年少女に嫌な話を聞かせるな」
そんな苦境の中でこいつらはミスタードーナツを取り合っていたのか……そりゃそらるも拗ねちゃうよ。吸血鬼とはいえ、あいつは元々、貴族の血筋だろうが。それが今や、こんな廃墟の中で汚らしい中年のおっさんとの同居生活とは、まさに落ちるところまで落ちたという感じだな……その原因の一端を担っていると思うと、私としては、複雑な心境だけれど……。
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灰猫(プロフ) - 梅茶漬けさん» 梅茶漬けさんコメントありがとうございます！ずっと更新していなかったにも関わらずお気に入り登録を外さずにいてくださりありがとうございます！ちまちまですが頑張って化だけでも完結まで持って行きたいと思います！ (2021年8月3日 19時) (
レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - れいさん» れいさんコメントありがとうございます！一年以上更新してなかったこの作品を発掘してくださっただけでもありがたいのにそんなありがたいお言葉まで……こちらこそ読んで頂きありがとうございます！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - RONONさん» RONONさん、コメントありがとうございます！たくさん好きと言って頂けて嬉しいです！！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
梅茶漬け(プロフ) - 更新ありがとうございます！！とても素敵な作品だったので通知が来た時はとても嬉しかったです…！これからも無理せず灰猫様のペースで頑張ってください、応援しています！ (2021年8月3日 2時) (レス) id: 38bd223230 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 一気見しました。すごい好きです！作ってくれてありがとうございます←いきなり (2021年6月27日 12時) (レス) id: 1e82b4fb9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2020年6月8日 1時
