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四階にある、三つ目の教室。どれも扉が壊れている。いるのなら、この三つの教室のどこかに、歌詞さんはいるはずなのだけれど＿＿
一番目の教室は外れ。
二番目の教室に＿＿歌詞さんはいた。
「遅いよ、Aちゃん。待ちくたびれて、もう少しで寝ちゃうところだった」
伊東歌詞太郎は＿＿罅が入って割れまくった、つまずくどころか、裸足で歩いたら深い切り傷を負いそうなリノリウムの床に、それはもう腐っているんじゃないかというような変色した段ボールを敷いて、その上に寝転がったままの姿勢で、開口一番、そんなことを言った。相も変わらず仔細構わず、まずは見透かしたようなことを言った。
皺だらけの、古ぼけた和服、ボサボサの髪、総じて、汚らしい風体。清潔感や清涼感などという単語は、この男とは全く無縁の世界の単語である。この廃墟に相応しい格好であるといえばその通りなのだが、ではこの廃墟で暮らすようになる前は、果たして、歌詞さんがどんな見た目だったのかといえば、今やもう想像すらもできない。
歌詞さんは面倒そうに、頭をかいた。
そして、それから＿＿もう辿り着いたというのに、不安からか、それともいかにも胡散臭い歌詞さんに対する警戒からか、私の制服を握った右手を離そうとしない、半身を私で隠すようにしている月崎に、気付く。
「なんだい。Aちゃん、今日はまた違う男の子を連れているんだね。きみは会うたんびに違う男の子を連れているなあ＿＿全く、ご同慶の至りだよ」
「うるせえ。同じ台詞を何度も言うな」
「そんなことを言われても、同じシチュエーションなんだからしょうがないじゃないか。引き出しが少ないんだよ、この僕は。ん？ しかも、また前髪斜めの男の子だね。制服からすると同級生かい？ Aちゃんの高校は、校則で髪型が規制されているのかな？ そりゃ随分と古めかしい制度が残っているんだね、興味深い」
「そんな校則はねえよ」
偶然だ。
というか、髪色の違いはあるとは言え、相川と月崎との髪型がかぶっているのは、月崎が相川の真似をしているからだろうと思う。相川の髪型の理由は知らないけれど、天宮は、まあ、一般的な男性の象徴として、なのかな。そんなところだろう。
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灰猫(プロフ) - 梅茶漬けさん» 梅茶漬けさんコメントありがとうございます！ずっと更新していなかったにも関わらずお気に入り登録を外さずにいてくださりありがとうございます！ちまちまですが頑張って化だけでも完結まで持って行きたいと思います！ (2021年8月3日 19時) (
レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - れいさん» れいさんコメントありがとうございます！一年以上更新してなかったこの作品を発掘してくださっただけでもありがたいのにそんなありがたいお言葉まで……こちらこそ読んで頂きありがとうございます！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - RONONさん» RONONさん、コメントありがとうございます！たくさん好きと言って頂けて嬉しいです！！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
梅茶漬け(プロフ) - 更新ありがとうございます！！とても素敵な作品だったので通知が来た時はとても嬉しかったです…！これからも無理せず灰猫様のペースで頑張ってください、応援しています！ (2021年8月3日 2時) (レス) id: 38bd223230 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 一気見しました。すごい好きです！作ってくれてありがとうございます←いきなり (2021年6月27日 12時) (レス) id: 1e82b4fb9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2020年6月8日 1時
