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けれど……なんなんだ？
この、まるで通り魔のような『怪異』……自転車を潰し、ブロック塀を砕くあのパワーからして、どれほどにひとがたであったところで、あれが『人物』でないことは最早あからさまだが、しかし＿＿その『怪異』が、どうして私を襲う？
怪異にはそれに相応しい理由がある。
意味不明なばかりではない。
合理主義＿＿理に合する。
それが、私が歌詞さんから学んだ、あの美しき男吸血鬼との付き合いから学んだ、最大の収穫だった＿＿なればこそ当然の帰結として、この怪異にも、必ず、理由があるはずなのに、それが私には、全く思い当たらない＿＿
原因は何なんだ。
今日あったことを思い出す。
今日会ったひとを思い出す。
浦田渉。
相川真冬。
天宮翔太＿＿
二人の弟に、担任の教師、顔も朧なクラスメイト達、それに＿＿
順不同に頭の中に名前を挙げていき、
最後に私は、月崎志麻の名を思い出す。
「…………！」
そのとき＿＿雨合羽が方向転換した。
その、ひとがたの身体を、真逆に転換させた。
そうするや否や、瞬間、駆け出して＿＿
あっという間に姿を消した。
呆気にとられるほどの、それは、唐突さだった。
「え……ええ？」
どうして、いきなり……？
全身を支配する痛みが、鈍いものから鋭いものに変化していく中、私は空を見上げる＿＿やはり星明かりが綺麗に映えている。自分の身体のあちこちから匂ってくる、ほのかな血の匂いが、酷く不似合いな風景だった。
口の中に、濃厚な血の味。
やはり内臓が傷んでいる……はらわたがほどよい具合にかき混ぜられている。だがまあ、これなら、死ぬほどではないな……。それに、病院に行かなければならないほどでもない。既に不死身の身体ではなくなったとはいえ、それでもある程度の治癒力は残されている、一晩安静にしていれば、そこそこ回復するだろう……命からがら、助かったってところか……。
しかし……。
殴られる直前の記憶が、不意に、特に理由もなく、蘇る。雨合羽の左拳が、私を目掛けて＿＿その拳だけが、クローズアップされて、フラッシュバックする。
自転車を殴ったときなのか、それともブロック塀を貫いたときなのか、摩擦で破れてしまったのだろう、ゴム手袋の、指の付け根の部分に並んで四つの穴が生じていて＿＿やはりそこはフードの内側と同じく洞のようで、抜け落ちているようで欠け落ちているようで、しかし。
あの左拳の中身は。
何かの、けだものの＿＿
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灰猫(プロフ) - 梅茶漬けさん» 梅茶漬けさんコメントありがとうございます！ずっと更新していなかったにも関わらずお気に入り登録を外さずにいてくださりありがとうございます！ちまちまですが頑張って化だけでも完結まで持って行きたいと思います！ (2021年8月3日 19時) (
レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - れいさん» れいさんコメントありがとうございます！一年以上更新してなかったこの作品を発掘してくださっただけでもありがたいのにそんなありがたいお言葉まで……こちらこそ読んで頂きありがとうございます！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - RONONさん» RONONさん、コメントありがとうございます！たくさん好きと言って頂けて嬉しいです！！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
梅茶漬け(プロフ) - 更新ありがとうございます！！とても素敵な作品だったので通知が来た時はとても嬉しかったです…！これからも無理せず灰猫様のペースで頑張ってください、応援しています！ (2021年8月3日 2時) (レス) id: 38bd223230 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 一気見しました。すごい好きです！作ってくれてありがとうございます←いきなり (2021年6月27日 12時) (レス) id: 1e82b4fb9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2020年6月8日 1時
