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拳の巻き起こした風圧だけで、服が裂けている。
同様に、ボストンバッグのスリングが切れていて、どすんと、私の肩から足元へと、落ちた。
「……だ、段違いだ」
苦笑いすら＿＿さすがに引く。
直撃しなくとも、ただ巻き込まれるだけで、この驚異的な気配……伝説の吸血鬼とまでは到底いかないにしたって、それを連想するレベルの圧巻さ……物理的恐怖を伴う怪異。
母の日なんてとんでもない。
これは間違いなく、春休みだ。
自転車は失った。
それでも、走って逃げることは可能だろうか？
雨合羽の今の動きを見る限りにおいて……いや、見えなかったのだけれど、つまりそれは見えないほどの速さだったということだから、私の足では逃げ切ることなんて、不可能だ。
それに。
たとえ逃げるためであっても、この怪異に、背中を向けたいとは思えない＿＿この雨合羽に背中を向けることが、目を逸らすことが、何より怖い。それは、剥奪することができそうもない、根源的な恐怖だった。
早くも前言撤回だ。
慣れられるものか、こんな感覚。
どれほど場数を踏んでも関係ない。
思い出すだけでも、御免だった。
くるぅり、と、雨合羽がこちらを向いた。フードを深くかぶっているため、その内側の表情は窺えない＿＿が、しかし、表情がどうとかいうよりも、そこは、その部分は、深い洞にでもなっているかのようだった。暗く、暗く＿＿全くもって、何も窺えない。
世界から欠け落ちているようだった。
世界から抜け落ちているようだった。
そして、雨合羽は、私に向かってきた。
左拳。
反射神経だけでかわせるような速度ではなかったが＿＿しかし、さっきマウンテンバイクを破壊したときと同じく、まるっきりの直線的な動きだったため、初動の段階で、覚悟を決めた意志を持って反応できたため、またもすれすれで避けられた＿＿避けた左拳は、あっさりと、当然のように、私の背後の、ブロック塀を貫通した。カタパルトでもぶちかましたかのような有様だった。
その悪質な冗談みたいな破壊力に驚愕する一方で、雨合羽がブロック塀から左手を抜くまでのタイムラグを利用して体勢を立て直せるかと思ったのだが、つまり、いうなら瓶の中に手を突っ込んだ猿みたいなイメージで、雨合羽に数秒の隙が生じるかと思ったのだが、そんな計算、甘い甘い、通じない。
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灰猫(プロフ) - 梅茶漬けさん» 梅茶漬けさんコメントありがとうございます！ずっと更新していなかったにも関わらずお気に入り登録を外さずにいてくださりありがとうございます！ちまちまですが頑張って化だけでも完結まで持って行きたいと思います！ (2021年8月3日 19時) (
レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - れいさん» れいさんコメントありがとうございます！一年以上更新してなかったこの作品を発掘してくださっただけでもありがたいのにそんなありがたいお言葉まで……こちらこそ読んで頂きありがとうございます！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - RONONさん» RONONさん、コメントありがとうございます！たくさん好きと言って頂けて嬉しいです！！ (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
梅茶漬け(プロフ) - 更新ありがとうございます！！とても素敵な作品だったので通知が来た時はとても嬉しかったです…！これからも無理せず灰猫様のペースで頑張ってください、応援しています！ (2021年8月3日 2時) (レス) id: 38bd223230 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 一気見しました。すごい好きです！作ってくれてありがとうございます←いきなり (2021年6月27日 12時) (レス) id: 1e82b4fb9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2020年6月8日 1時
