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37/仮病っていう病気だから ページ37

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【A視点】


「ゴホッゴホッ」

「ツ、積みゲー」

「ゲホ」

「ホ、ホールケーキ食いたい」

「いいから黙ってろバカ……」


元気づけようと開始したしりとりだったが、心底鬱陶しそうに拒否されてしまった。

仮病という立派な病気に体を侵されてしまった私は高杉の右隣に布団を広げなんか額に貼ると冷たくなるアレも貰って、体を休めていた。

松陽達が夏祭りに繰り出してから三十分程経つ。

皆、楽しんでるといいな。


「なぁ高杉。以前に祭りが好きって言ってたよな」

「……何だ、藪から棒に」

「睨むなよ、思い出しただけ」


てかこれ、まだしりとり続いてる?


「終わってる」

「あ、そう」


素っ気なく返す。

途端にシン……と静まり返る二人きりの空間。
妙に熱を持った空気が肌に当たって少し暑苦しい。

高杉は何かが不満らしく私の目を一切見ない。


「なんで、嘘ついてまで残った」


唐突な質問に、無言で天井を仰ぐ。


「病原菌なんぞ……何であれ弾き返しそうなバカが、風邪なワケねェだろ……俺に付き合ったのか」


語尾をすぼめる高杉の声は普段より聞き取りづらくて仕方がなかった。

いつものあの苛立った顔。張った声。私に指をさす生意気な面が今はまるで感じられずこっちまで調子が狂いそうになる。


「付き合ったんじゃない。マジで風邪ひいた」

「………じゃあ、熱計ってみろよ」

「松陽に熱した鉄板みたいなおでこになってますよってお墨付きもらったから要りません。計りません」

「……、なんだそれ」


徐々に和らぐ高杉の声色。

顔は見えないが、今笑ってるんだろうか。


「ヅラに綿あめ奢ってもらうってアレは」

「そんなモン要らないよ。四六時中頭に綿あめ巻き付いてるんだ。食べたいと思わない。何よりヅラに奢られた後が怖い」

「言えてるな」


そうだろ?

と天井を仰ぐのを止めて高杉の方に目をやる。

そこには穏やかな寝息を立てて眠るバカ面があった。眉間に窪みはまるで無く、顔の赤みも引いた楽そうな面が。


「なんだ、お前こそ仮病だったんじゃねーの?」


ニヒルに笑いからかうも煩い反論は無い。

スー、スー。

ガキらしい寝息が左耳から右耳を抜けていく。

何だかこそばゆかった。


「よっと」


すっかり暖まった布団から音を立てないよう、こっそり抜け出し慎重にそれを畳む。その上にぺっと紙を置き、また音を立てないよう部屋を出た。


「おやすみ。"晋助"」


───さて。

準備に取りかかりますか。

38/きたねぇ花火だ→←36/微熱かどうかは人による



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佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
- 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
白虎 - 続きを読みたいのですが、パスワード教えてくれませんか? (8月16日 23時) (レス) @page3 id: ec81a6d504 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時

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