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「伊沢ー、ライター応募の履歴書確認したぁー?」
「あ、ふくらさん、ごめん!今からやる!」
「おいー!4月末までには新しいライターに入って貰えるようにしたいからさー」
河村が自宅のパソコンで約束の時間にzoomを立ち上げると、繋がった早々に伊沢が福良に注意を受けてるところに出くわした。
一応伊沢はCEOなので、この会社の一番偉い奴であるはずだが…周りのメンバーに叱られたり責められたりすることは多々ある。
「…どーも、河村入りましたー。僕も全然見てないんだよなー。福良、面白そうな子、いた?」
「あ、河村。…僕は何人か気になる人、いるかな」
河村はカメラに向かって挨拶すると、気づいた福良が返事をする。伊沢と同じように怠っているのに福良の口調は幾分か優しい。
なぜなら、寒いシーズンは心身ともに体調を崩しやすい河村は、しばらく休養をとっていて最近やっと前までの業務量に戻りつつあるのだ。
働き出して無理されて再び寝込まれては困るというのが本音だろう。
今回のライター選考も、河村の負担を減らす伊沢の心遣いてあると河村は思っている。
早速、福良がピックアップしていた応募者を河村はひとつひとつ確認していく。そして、目を見開いた。
苗字は曖昧でしっかりとは覚えていなかった。中学生の頃だったからひと間違いという可能性もあるかもしれない。
だが、幼き日に自分のことを「たくくん」と舌っ足らずに慕ってきた女の子と、名前と年齢が一致している。
なによりアイメイクでは隠せない大きく、黒色なんだけど、黒色だけじゃない独特の輝きを持つ美しい瞳があの女の子と同じだった。
自分のことを最強だと思っていた時期。また同時に自分は井の中の蛙だと気づいた時期。河村は彼女から離れた。
思春期の男子が女の子と遊ぶのが恥ずかしくったこと、中学生になり勉学に忙しくなったことが主な理由である。だが。
『たくくん、頭いいねー!』
中学校に入り自分より頭の良い奴がいることを知った。
屈託ない笑顔で褒めてくれる彼女の言葉を素直に受け取れなくなってしまったのも疎遠になるきっかけに当てはまらないとは言いきれない。
彼女に幻滅されることが怖かった。
ずっと彼女のヒーローでいたかった。
「…AA…」
「俺もその子気になった!」
「え?」
「だってねぇー」
河村は履歴書を見ながら名前をなぞるように呟いた。そのあと河村はこの子の履歴書の学歴のとこでもう一回目を見開くことになった。
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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます!夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです!ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです!また読みに来てくださいませ! (2022年1月23日 20時) (レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜!これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます!好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました!そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです!更新は遅めですが頑張ります! (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます!! (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらべ | 作成日時:2021年4月17日 12時