禽も困しめば車を覆す

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今日もTwitterが二桁の通知を受け取っていた。

主にライターアイへの苦言アンチからのメッセージだ。今までも今現在もライターアイ以外にQuizKnockに女性のライターはいる。

その人たちがAと同じように恨み辛みを吐かれていたのかは知らないし聞きもしないが、今までライターアイが性別不明でやってきたからこその批判を今更になって一気に集めているのかもしれない。

この間までライターアイの記事を褒めていた視聴者のアカウントがアンチに変わってライターアイを責めたてる。

その人間の汚さと醜さが、ある意味人間らしい部分が溢れているように感じてAはとても好きだと、いじめられた経験を経て鼻で笑えるようになった。

『…匿名といいつつ匿名じゃないことを知らないのも』

可愛らしい部分だと思える。少し外国のサーバーを通せばいいのに、とAが心配さえしてしまう。ストレートでコンプラに引っかかる言葉を送ってくるアカウント達。

詳しい人が本気を出せば特定出来てしまうのに。Aは顔が見えないことを利用して相手はどんな下卑た笑いを浮かべているんだろうと想像してしまう。



『私と同じ顔をしてるんだろうけど…』

多ボタンマウスのひとつに割り当てたボタンをAは親指で押して、画面を切り替える。

画面は常にダークモードにしているTwitter。流れるタイムラインを二日前に遡った。

《ライターのアイって…多分この人。オフィスにちょこちょこ通ってるし、高認受けて東大入ったって言うの友達の友達が聞いたし…今年の一年生でしょ！》

そう…裏垢でライターアイの情報を流したのは何を隠そうAA本人であった。

友達の友達なんて噂っぽい保険を掛けちゃったりなんかして。

そのうえ、こちら側は何重にもサーバーを介して自分にはたどり着かないように細工をしている。

『…こんなに早く…それも事実確認とせず…釣り針にかかってくれるとは思わなかったけど…結果オーライか…っ』

悪魔とその取り巻き達が発狂している裏垢のタイムラインを喉まで上がってきた吐き気を飲み込んで椅子を倒しながら立ち上がり、寿命を縮めることが分かっているが電源ボタンを長押ししてパソコンを強制終了させた。

震える拳をギュッと握りしめる。他の人の暴言に笑って対処出来るようになったとはいえ元凶の悪魔を見ると、やっぱり過去の自分が顔を出してしまう。

意識的に息を吐いて、ゆっくりと手を開くと深い爪の痕がそこに残っていた。

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