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シャワーを浴びてメイクを落とし、スイッチをoffに切り替えたAは自宅のパソコンのEnterキーを人差し指で弾く。するとスリープモードになっていたデスクトップのパソコンは音を立て、モニターを明るくした。
Aはそのモニターの前のローラーのついた椅子に座って、デスクトップ全体に並べられたファイルを開き一番下のアイコンをダブルクリックする。
そうすれば新しいウィンドウが開かれ黒い画面に3、2、1、とカウントダウンが始まって、次に3桁の数字が現れた。
Aはそれを瞬時に掛け算の形で表記を変え、キーボードで打ち込む。所謂因数分解の形で。QuizKnockのアプリゲーム、ワルプライムのアニメーション演出がない、Aがプログラミングした自作ゲームのようなものだった。
解いていけばいくほど難易度がどんどん高くなっていく。
桁は3桁から4桁に増え、5桁に増え、最終は6桁になっている。それに加えて数字はフラッシュ暗算のように一瞬で消えていくようになった。
相当難しいことをやっているのだが、Aにはこれが普通だ。昔、父親との病院への行き帰りに気まずくて見ていた車窓の外。すれ違って行く車のナンバープレートでやっていたこと。
鶴崎や福良がAに勝てないのは当たり前なのだ。通院している何年もの間、何十回も何百回もやっていたAの意識の飛ばし方。因数分解は息抜きでありAの生活の一部であったのだから彼らとは歴がまるで違う。
難問も続けて因数分解を解いていってたAのキーボードに触っていた手が鈍くなり遂には止まった。シンキングタイム中に黒い画面に映った自分の緩んだ口元が気になった。
数学は楽しい。数字は綺麗。
Aは勉強をしていてそう思っていた。そして、そういう人間が他にもいることをQuizKnockに入って知った。
特に鶴崎は、Aの記事や福良からAの話を聞いては、A自身に興味を持ち、一緒に数学に関しての専門的な話をすることが多くなった。
鶴崎との話は、Aにとっても正直楽しかった。数学の前では演技している自分ではなく、飾らない素の自分になってしまっている気がした。
そして、今も。黒い画面でニヤける自分にそれではいけない、と言い聞かせ一旦初心に戻る。
黒い画面で時間が経過しているだけのウィンドウを閉じてAは悪魔と繋がる裏垢を開いた。
次に進むため。
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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます!夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです!ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです!また読みに来てくださいませ! (2022年1月23日 20時) (レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜!これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます!好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました!そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです!更新は遅めですが頑張ります! (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます!! (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらべ | 作成日時:2021年4月17日 12時