第八部 才器 ページ38
「Aさん、Aさんって…数学得意だよね？」
顔色もまあまあ落ち着き、記事の執筆も元のペースに戻ってきて珍しくAがオフィスに出社しパソコンをいじっていたとき。これまた珍しく業務がひと段落ついたらしい福良が声を掛けてきた。
パソコンの画面に集中していたAは肩と眉根をぴくりと動かして後ろを振り向く。驚いた表情に小さな笑みを張りつけた。
『え、まぁ…得意というよりは好きという感じになりますかね？』
話しかけられた内容があまりにも抽象的で福良に首を傾げながら疑問形で返してしまう。
「じゃあ、記事のほうは一旦置いてて貰っていいから…これ解いてみてくれない？」
福良から差し出された白いコピー用紙。Aに手渡し福良は目を細めて笑っている。多分解けない、って思ってるんだろうなとその表情から読み取れた。
コピー用紙にはゴシック体で８から始まる数字の羅列が何段にも書かれている。何桁あるのかだって数えるのが大変なくらいの。
『いやー、いやいや』
Aは見ただけで笑いが込み上げてきた。
『これ、無謀なやつですよね。…RSA暗号に見えますし…』
「あ、やっぱりそう思った…？じゃあ」
定義がいくつか書かれた別紙が福良から与えられた。
『うわ……掛け算での定義って、やば…』
それでも無茶苦茶な問いに深刻そうにAは愚痴を零す。
「そうだね。…でも、まぁ、…健二は手計算でやってるからね」
福良はいつもの楽しそうな笑い声をあげている。Aは福良の話に相槌をうちながら、机に広げコピー用紙を拝借すると計算をし始めた。
『健二？健二ってどなたですか…ん、？』
「あ、Aさん…サマーウォーズ見たことないの？」
『あー、サマーウォーズ…名前だけ聞いたことあります。…RSA暗号関係あるんですか？』
「まあ、…僕の推測でもあるんだけどね…、主人公が解いちゃって大変なことになっちゃうみたいな…？」
『なるほど…フィクションで良かったです。これ解ける人が実際にいたら誘拐されてるか、殺されてますよね』
そこからAは数式の中へ没入していくようで大きい指数に文句も言わず黙々と計算している。白かった紙がボールペンで次々と書かれてる数字に染められていく。
『……はい、これで』
約1時間を掛けて手計算のみで解を導き出した。
「え、正解！…やば！…」
『…はぁ…やったあー！』
疲れと共にため息を吐き両手をあげてAは喜んだ。福良が酷く驚いている隣で。
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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます！夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです！ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです！また読みに来てくださいませ！ (2022年1月23日 20時) (
レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜！これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます！好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました！そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです！更新は遅めですが頑張ります！ (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます！！ (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わらべ | 作成日時：2021年4月17日 12時
