禽も困しめば車を覆す

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「あっ、」

《記事を確認しました。誤字脱字なし。訂正もありません。Aさんの記事がアップされる日程などは、後日福良もしくは編集部から連絡することになると思われます》

という内容のメールをAAのアドレスへと送ろうとしたときに河村は慌てて送信ボタンの上に置かれていたポインターの矢印をメールの本文に戻した。

Aの書いた記事が、あまりにも攻めた内容で河村は本来の目的を忘れるところだった。

河村は本文から３行ほど改行し。

《お話したいことがありますので、Aさんの時間に都合が付く日を教えてくれませんか？》

と、あの「ニセ文豪クイズ」で本物の文豪の文章にプラスしても違和感ないものが作れるほど文才のある河村が。あの「著作権チキンレース」で本物の文豪達に交じって伊沢達を翻弄し苦しめたあの河村が。

こんな短い文章を悩みながら付け加えて、送るか送らないかを１５分ほど迷ったのちにゆっくりとポインターを動かして送信ボタンを二回クリックした。


そうしたら、次の日。

AAから河村に返信が届いていた。時間を確認すると河村がメールを送信して一時間後にはAは素早く返信をくれていたらしい。

《分かりました。来週の月曜日なら17時半以降空いています》

と簡潔に書かれていた。

それを確認し、河村はもちろんのことその日を選んだ。そして伊沢へ。休暇をとる旨を伝える。休む理由などは適当に作り上げて。

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