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Aは胸の真ん中くらいを押さえている。

目で分かるほどの肩を使った呼吸、そして河村の耳にも届くほど大きな喘鳴。目の前のAが過呼吸を起こしていることが理解出来た。

河村自身にも経験がある。

過度な緊張と不安から手が震えて、最終的に息苦しささえ感じる。

でも、いざ当事者ではないこちらの立場に立たされるとどうすればいいのか分かっているのに動かない。

事情が分かって対処してくれていた伊沢や福良の偉大さに今更ながら気づき、本当に足を向けて寝られないことを実感した。


「…えっと、大丈夫ですか?Aさん…」

戸惑いつつ出した声はとても小さな音量。自分の息苦しさに精一杯の彼女には聞こえていないと思う。

だけど、しゃがみ込むように息をしている彼女は顔を上げた。河村はAの頬を伝わり落ちる涙を見てしまう。

河村は不謹慎だがこぼれ落ちる涙ひとつひとつが美しいと思った。と、同時にその顔に苦しさも感じる。

過呼吸特有のしゃくりを上げつつ泣く、幼い泣き方をする様子があの頃のあの子に被って。

もうここまで来たら確信に変わる。

QuizKnockの新進気鋭ライターのAAは…。河村が知っている小さな女の子の「Aちゃん」に違いない、と。

そう納得してしまえば、今まで喉元に引っかかったままになっていた魚の骨がなくなったようで河村は無意識のうちに泣くあの子にしていたように膝を曲げて手を伸ばした。


「大丈夫ですよ」

河村とAの間に割り込むように入ってきた声に河村は慌てて手を引っ込めた。

Aからすれば、いきなり河村から頭を撫でられれて「気持ち悪い」やら「セクハラだ」やら思われかねない。

河村は行き場のなくなった手で怠惰に伸びっぱなしの髪を撫で付けた。


やってきたベテランの看護師はこういうことはよくあるのか、慣れたようにAの傍に寄り添って優しい声をかける。

過呼吸の場合、周りが必要以上に心配してしまうと本人に伝わりかえって症状を悪化させてしまうから。

Aはその看護師に頷きつつも未だ体を震わせていて、力の入りづらい体を支えられながら奥の部屋に案内されていた。

「あっ…」

その弱々しい彼女の背中に河村は声を掛けるのは逆効果だと口を結ぶ。

「河村さーん」

「えっ、…はい」

「こちらへどうぞ」

ボーッと廊下の先を見つめていたところ河村は自分の名前を呼ばれビクッと反応する。だが、頭の中からは過呼吸を起こす彼女の姿が離れてはなかった。

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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます!夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです!ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです!また読みに来てくださいませ! (2022年1月23日 20時) (レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜!これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます!好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました!そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです!更新は遅めですが頑張ります! (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます!! (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わらべ | 作成日時:2021年4月17日 12時

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