禽も困しめば車を覆す

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Aは月2回の精神科の定期受診に病院を訪れていた。

中学生のときから通うことになった病院。今は東京に住むところを移したため、そのときの病院から紹介状を貰い通い始めることになった家から電車を使って30分くらいの病院。

自分も少しだけ精神科にかかるということに抵抗はあったが、母親は随分と自分を否定して余計に症状を悪化させる事態になった。

父親に説得され精神科に行ってみれば、今の症状を話をして薬をもらうだけ。ほぼほぼ内科と変わりない初診だった。

そこから五年間。医師に自分の気持ちをうまく言葉にして伝えることができる。自分が思い悩むことを相談出来る。そんな状態になるまではまだまだ程遠く人間不信の気があるのだが…。

以前の病院で1度治療や薬を2週間ほど拒否し、反跳症状がぶり返したときにとても苦しかったため定期受診は今のところやめられない。


『…最近、夢を見るのが怖いんです』

いつも通り近況と症状を医師に伝える。

東京へ引越し。大学入学。
久しぶりの集団生活。

Aが入学当初のストレスで、比例して増えていた薬。気分と体調がやっと最近落ち着き、この前の診察で次のときに薬を減少していこうとAと言っていたため、医師は少しだけ残念そうな顔をしていたが「焦っても良くないし、話聞くと寝れてなさそうだし」と。

寝る前の薬を気持ち程度に増やしてくれた。


その薬のおかげで睡眠時間は確保できるようになったが、反面Aは日中帯に目眩や頭痛を感じるようになってきた。

薬の副作用と夏の暑さが相まって体調不調の日が増える。

だけども3周年、4周年。年々業務が増えることでお馴染みのQuizKnock。今年の夏もメインターゲットの学生層のためにQuizKnockはエンターテインメントを提供しなければならない。

Aはバイトのライターではあるのだが人手が足りなければ違う部門に駆り出されるし、そちらを担当することになった先輩ライターの穴を埋めるために更なる記事の提出をしなければならなくなる。

7月からは、入社当初伊沢から受けた説明の通り編集部のほうの業務にもAは関わり始めることになってしまった。

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