禽も困しめば車を覆す

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復讐の土台としてなんて不純すぎる動機で応募したQuizKnockからメールが届いたのは一週間後だった。無事に1つ目の難関の書類選考が通ったことが件名でわかり、メールには日時とリモートで行われる旨が書かれていた。

流石、ネット社会に強い有名人が社長であると思った。自分と同じくらい顰蹙を買いそうな理由でQuizKnockを応募する人もいるだろう…会いたいだけならまだしもあわよくば連絡先を…みたいな。

オフィスの住所だって軽率に晒されてしまっては困るだろうし、上手な自衛だと思われる。

こちらにとっても未だ外に出ること。人の視線を感じることに抵抗のある自分から都合良くありがたい提案だった。

面接当日。

復讐を考えたとき、同時に勉強し始めたメイク。鏡で自分の顔を見てると刷り込まれた悪口の記憶が蘇る。一種の洗脳。鏡の中に写る醜い自分に湧き上がる吐き気を鏡から目をそらすことで我慢した。


時間になり、1分。かかってきた通話を取ると案の定、QuizKnockだった。

志望動機に「QuizKnockの皆さんに憧れて勉強して東大に受かった」ようなことを書いたから、QuizKnockのことも軽く目を通していたので。

CEOの伊沢拓司。
総合プロデューサーのふくらP。
独特の感性で企画を生み出す河村。

画面に映し出された3人のことは知っていた。


『お時間をいただき、ありがとうございます』

先にひとこと挨拶すると、CEOの伊沢が柔らかく笑って。

「面接だけど、緊張し過ぎないようにしてね」

と気遣いをしてもらった。はっきりと返事をすると、すぐにいくつかの質問を投げかけられる。

「志望動機は？」
「長所と短所は？」
「ライターになったら書きたい記事は？」

など予想していたもの。そして、自分にはもうひとつ質問が飛んでくると思っていた。


「答えたくなければ、答えなくても本当にいいんだけど……高校に行ってない理由って聞かせて貰える？」

そう、CEOの彼が聞いてきた。

『はい、』

東大発の知識集団…彼らが自分のその部分をスルーしてくれるとは思っていなかった。

『…中学二年生の時に、病を患いまして…まともに中学校に通うことができず、高校受験にも間に合いませんでした。…しかし、地道に勉強して今年から憧れでした東大生になります』

嘘をつくときは少しだけ真実を混ぜるといい、という言葉もあるらしいが、この部分に関しては私は本当のことしか言ってない。

嘘はついていない。それが本当に大事な部分を隠していたとしても。

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