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早く会いたいな、片時だって離れていたくない。
「壱馬さーん、」
「んー」
ヘアメイクを終えた様子の海青に呼ばれて次は俺かと席に着くと、
生憎隣の席だった北人が鏡越しにニタニタと笑い掛けてくる。
「なんやねん」
「寂しいんでしょ壱馬」
「はあ?」
「Aさんに会いたい時の顔してた。分かるよ俺も会いたいもん。」
「残念ながら絶対呼ばんからな。」
「分かった!俺飲まないし、長くならないって約束する!」
「どんだけ必死やねん嫌や言うてるやろ…」
いきいきと話す北人にそろそろ無視を決め込みたくなる。
まあ、Aさんは基本的に部屋に篭りっぱなしだし、
北人達の事も可愛がってくれているから、誘ったら
快諾してくれるだろう。嫌、それはそれでもやもやする。
「俺ら日頃頑張ってるじゃん?疲れた仲間を癒すと思ってさー」
「お前はお前で自分で癒し見つけろよ、Aさんは俺のやし。」
大きな目をぱちくりと瞬かせた北人は、次の瞬間女の子みたいに
きゃーきゃー騒ぎ出して、もう本当に放って置こう。
自分の恋人とはいえ、俺の、なんて言うのは好きじゃない。
物ではないし、そんな自分本位な言い方はしたくなかった。
だけど相手がAさんだとどうも、全方位に独占欲や嫉妬心を
抱いてしまってこのザマだ。俺もまだまだ子供だという事だろうか。
「壱馬、ほんまにAちゃんの事好きやなあ。」
「良い事だよね。壱馬、良くも悪くも真っ直ぐすぎるから、
それが向いた先があんなに良い子なら何にも心配要らない。」
北人とのやり取りを聞いていた陣さんと陸さんがそんな会話を
していた事は、遂に揺さぶってきた北人を交わすのに必死だった
俺は知る由もない。
「Aさんに今の聞かせたい!!電話しよ!」
「しれっと電話させようとすんなや!嫌やって!」
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作者名:たる | 作成日時:2022年3月3日 0時